エゴエゴ

□ボクのパパとお父さん22
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パパと夕飯を食べていたら、玄関のドアが開く音がしました。


「ただいまです。」


「あ、お父さんの声ですー。」


久しぶりにお父さんが帰って来たです。



「あー、そうみたいだな…。」


パパは、いたって普通に答えていますが、スゴく嬉しそうです。



ボクにはわかるですー。

「迎えに行ってくるです。」


「別に行かなくても来るだろう。」

…パパは、意地っ張りです。


お茶碗とお箸をおいて、お父さんを迎えに行くと、


「ただいま、ひろ。迎えに来てくれたの?」


「……はい…です。」


………あれっ?

いつものお父さんと…違うです。


真っ黒なマントを羽織って…尖った歯が2つ出てるです…。


「……お父さん?」


………まるで、

絵本に出てくる“きゅうけつき”みたいです。



ボクが後ずさりすると、

「ひろ?…ああ、ごめん…こんな格好してるから、びっくりさせちゃったね…。」


そう言って、目がまん丸になってるボクの頭を撫でてくれる大っきな手は、いつものお父さんでした。


「その格好…どうしたですか?」


すると、リビングからパパもひょっこり顔を出しました。


「…ひろ、どうかしたのか…、…って、野分!?…なんだ!?その格好は!?」


「あ、ヒロさん。ただいまです。これは…ちょっと先輩にイタズラされてしまって…。」


「……イタズラ…ですか?」


お父さんの病院には、お茶目な先輩がいるですね…。

「うん。今日は病院で入院してる子ども達のお誕生会が月に1回あってね…。看護師さんや俺達がそれぞれ仮装して寸劇やるんだけど…」

お父さんは、説明しながら困った顔をしています。


「おおかた…“先輩”とやらに、服を隠されたんだろうよ。」




「…はい。そうなんです。オマケにキバは歯科の先生が特殊な接着剤で付けてくれたんですが、その先生は急用で帰ってしまって…明日にならないと取れないし…。その上、ひろが喜ぶだろうって、先輩が…。」


………ボク、嬉しくないです。

尖った歯がついてるから…お父さんが頬っぺに、ちゅーしてくれないです。

パパだって、お帰りのちゅーしてもらえないので、明らかにムッとしてるです…。


「…とにかく、着替えて来いよ。飯は…食えるんだろ?」


「はい。食べるには支障ないんですが…いつもみたいに、キスが出来ないのが残念です。」


お父さんは、ちゅーの代わりにパパをぎゅっと抱きしめました。


「……ば…ばか…///何やってるっ。早く着替えろ。」

怒りながらも、パパはとっても嬉しそうですー。





着替えて来たお父さんと、一緒に食べかけのご飯を食べ始めましたが、やっぱり食べづらそうです。

「しっかし、お前…よくその格好で帰って来れたな。」


「…あ…はい。だいぶジロジロ見られてしまいましたが…。」


お父さんは、もぐもぐしながら苦笑いしました。


「でも、…似合ってない………こともない…。」

「えっ?ヒロさん、今…なんて…?」


「な…なんでもねーよっ///」


そう言った後、真っ赤になってご飯をいっぱい口にかき込みました。

パパ、お行儀悪いです。


「んっ?ひろ…どうした?」


「何でもないですー。パパの作ったハンバーグ美味しいですー。」


「うん。ヒロさんの作ったハンバーグ最高です。この歯が邪魔ですけど…。」


「しょうがないだろ。まぁ…明日になったら取れるんだから。」


「はぁ。そうですね…」

お父さんは、がっくり肩を落として頷きました。






……その日の夜

夜中にボクが目を覚ますと、お父さんのお部屋からパパの声が聞こえてきました。



「……ぁ…んっ…野分…そこばっかり…吸うなって…ぁっ///……はぁ…はぁ…。」



……す…吸う…ですか?


「…でも…ヒロさん、…ここ…噛まれるの好きでしょ?今夜は無闇に動くと、キバでヒロさんの綺麗な肌にキズが出来てしまいますから…ジッとしてて下さいね。」


「……んんっ///…ぁ…はぁはぁ…っ…だから…って…っ…はぁぁ…ぃ…い…野分…噛んで…もっ…と…吸って…」


……か…噛んで…吸うですか?


「ヒロさん、そんな可愛い顔されたら…俺、ガマン出来ない…。」



……お父さん…パパを噛むですか?

………吸うですか?


絵本で読んだです。

もしかして…お父さん…本物の“きゅうけつき”ですか?


ち…血を吸うですかっ!?

たっ大変ですーっ!



ボクがお父さんのお部屋のドアを開けようとすると


「ぁ…んっ……野分っ…気持ちい…っ///…もぅっ…中に…ああっ///」


「ヒロさん、愛してます…。もっと俺を味わって…」

…………なに…やってるですか?


「…野分…もっと動いて…ぁっ…いい…///」


……なんだか…大丈夫みたいです。


お父さんは血を吸ってるわけじゃないみたいなので、ボクは安心してお部屋に戻って眠りました。







次の日の朝、目を覚ましたボクがリビングに行くと、お父さんがキッチンでご飯の準備をしていました。


「お父さん、おはようですー。」


「ひろ、おはよう。」



お味噌汁の味見をしているお父さんは、いつもの笑顔でボクを迎えてくれました。


……キバ以外は。


「パパは?…まだ寝てるですか?」


「ううん。今、洗面所で顔を洗ってるよ。」


「そうですか。…あの…お父さん…聞いてもいいですか?」


「うん?…なに?」


「夕べ…お父さんのお部屋から、“吸って”“噛んで”っていうパパの声が聞こえたです…。」


「えっ?ああ、フェラの時かな…?」


…………ヘラ?


「……ヘラって何ですか?」


するとお父さんは、


「あはは。ひろ、発音がちょっと違うよ。もっと大きくなったら教えてあげようと思ったけど…まぁ…いっかぁ。あのね…ヘラじゃなくて、フェ…っ!?…いてっ!」


いつの間にか、お父さんの後ろに立っていたパパが、物凄い勢いで走ってきて…お父さんの頭を拳で殴りました。


…とっても痛そうです。

「のーわーきー。またテメェは…、ひろに何を言おうとしたっ!?」


「いてて…。ヒロさん、いきなり殴るなんてヒドいです。俺はひろに正しい発音を……って、…く…苦しいですっ…。」


額に怒りマークをつけたパパが、お父さんの首を遠慮なしに絞めています。

「…お前が、ひろに正しい発音を教える前に…親としての道理ってもんを教えてやる…。」


……パパ…そんなに絞めたら…お父さんがポックリ逝ってしまうですよ?

「あ…あの、ボク…今でなくても良いです…。」


…パパとお父さんの様子を見ると…ボクには、ちょっと早かったのだと思います。

「そういうことを言うのは、この口かっ?もしくは、このキバが原因か?」

「いたたっ、ヒ…ヒロさん、ごめんなさい。俺、軽率でした。」


…そんなこんなで、ボクのパパとお父さんは今日もラブラブですー。





(おわり)

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