エゴエゴ

□ボクのパパとお父さん21
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「ただいまですー。パパいるですかー?」

ボクは、幼稚園の帰りにすごいのを拾ったです。


「ひろ、お帰り。………。…おい、……後ろの…それはなんだ?」


「ひろったですー。」


「ひ…拾った…って、…お前…。そんなデカいの拾ったって言うのか?」

パパは、ちょっと驚いたみたいですが、

ボク拾っちゃったんです。


「ワン。」

茶色い毛をした大きくて可愛いワンコ…。


「…ひろよりデカい犬じゃねぇかよっ。どっから連れて来たんだよっ?」

「つれてきたんじゃないです。ひろったですよー。」

ボクは、脱いだ靴をならべながら答えました。


「…どこの世界に、自分よりおっきいの拾ってくるやつがいるんだよ?」

パパは、そう言ってガックリ肩を落としました。

ボクは、えっへんと胸を張って言いました。

「ここにいるです。」


「……ダメだ。」


「どうしてですか?」

ボク、ちゃんとお散歩もするし、餌もちゃんとあげるです。



「……いいか、ひろ。このマンションは、動物は飼えないんだ。わかるだろ?」

「いやです。飼うですーっ。」


「ダメだ。元いた場所に返して来い。」


「いやですー。」

かわいそうですっ。

ボクは、ワンコにしがみつきました。

「ひろっ!」

「パパは分からず屋です。そんなパパ嫌いですーっ!」

ワンコを飼えないって事にも、大好きなパパに嫌いって言ってしまったことにも、

悲しくて…涙がポロポロこぼれてきました。

「うぇーんっ!」


「…おっ…おいっ!?ひろっ。」



「ただいまです。あれ…ひろ…どうしたの?」


そこへお父さんが帰って来ました。



「ワン。」


「…お帰り。」


泣いているボクと、しょっぱい表情を浮かべるパパと、尻尾をブンブンするワンコを交互に見たお父さんは…

「…ヒロさん…何があったんですか?それに…この犬…どうしたんですか?。」

お父さんが、目をパチパチさせながらパパに聞きました。




「どうもこうもねぇよ。こんなデカい犬連れてきた上に、飼うなんて言うんだぜ。」


「そうですか…。ひろ、可愛いワンコを拾ったね…。」

「えっぐ、えっぐ。はいです…。」


「…でもね、このワンコ…首輪してるから、多分どこかで飼われているんだよ。今頃、飼い主さんが探しているんじゃないかな?」



「……くびわ…ですか?」

お父さんに言われて、ワンコの首元を触ると…

「…あるです。くびわ…あったです。」

茶色いふわふわの毛の下から、革製の首輪の感触がありました。


「だから…ひろ。拾ったところに行ってみよう。」

そう言って、お父さんはボクの頭を撫でると涙を拭いてくれました。

…ちょっぴり観念したです。


「…はいです。」


ボクは、お父さんに連れられ、ワンコと一緒に拾った所へ戻ることにしました。




ワンコと一緒に歩いていると…

「ハチっ!?」


ワンコを見たおじいちゃんとおばあちゃんが近づいて来ました。


………ハチ?。

…シ…シブい名前です。


「ワンワン。」

ワンコは、ボクの傍から離れて2人の所へ走って行きました。


ボクは、寂しくてお父さんの上着をギュッと掴みました。

……お父さんは何も言わずにボクを抱っこすると、背中を優しくポンポンしてくれました。

「…お父さん。ボク泣いてもいいですか?」

「うん。いいよ。」

「……ボク…パパに…きらいって言っちゃったです…。」

「…じゃあ、帰ったら謝ろうね。」

「はいです。」



ペコペコと頭を下げるおじいちゃんとおばあちゃんに手を振り、おうちに帰ると


…パパが

………いませんでした。

「パパ?どこですか?」

「あれー。ヒロさん…どこ行っちゃったんだろ…?」

…ボ…ボクが…嫌いって言っちゃったから…

「……パパ。」

……どうしよう。

…どうしよう。


ドキドキが止まらないです…。


「探しにいくですっ!」

ボクが靴をはくと玄関のドアが開きました。


「よっこらしょ…っと」

ドアの向こうから現れたのは、茶色い大きなワンコで…。


「ヒロさん…どうしたんですか?その縫いぐるみ…。」



「……これか?…こ…これは…その…。…ひろに…と思って…。」

パパは、大きなワンコのぬいぐるみをボクに手渡しました。


「ボク…ですか?」


「…その…悪かったよ。ひろの気持ちも考えないでさ。ごめんな、ひろ…。」


「…パパ。」

ボクのために、買って来てくれたですか?


「今度、引っ越す時は犬飼えるとこにするし…だから、今は勘弁な…。」

………パパ。


「パパっ!」

ボクは、とっても嬉しくてパパに抱きつきました。


「パパ、ごめんなさいですー。ボク、パパにヒドい事言ったですっ。…ホントは大好きなのに…嫌いって言っちゃったですー!ごめんなさいですー。」

「…ひろ。」


…パパが…あんまり優しく頭を撫でるから…また涙が零れて来たです…。

「ひろ。男の子は…」


「はい。泣いちゃダメです…。」

でも、とまらないです。


「あーあ。ひろ、鼻水出てるよ。拭いてあげるからおいで。」


お父さんがボクを片手で抱っこすると、空いた手でぬいぐるみも掴み、リビングに連れて行ってくれました。






パパがくれた縫いぐるみは、フワフワと柔らかい手触りで…、

ご飯を食べた後、ボクはすぐにお風呂に入ってお布団に潜り込みました。

もちろん、ワンコも一緒ですー。






…その夜のこと

リビングからパパとお父さんの声が聞こえてきました。



「…ヒロさん……す…ごく……いいです。」


…お父さん、なにがいいんですか?

「……ばか…っ…抑えんなよ…動けねぇだろ。」

……おさえる?


「…だって……ヒロさん…っあ……気持ちいいです…っ。」


………なにを…やってるですか?

「……野分…動くなって……。」


「…でも…ぁ…っぁあ…い…。」


切羽詰まったお父さんの声が聞こえてきました。

…いつもと反対です。




気になってしまったボクは、ワンコを抱いてお布団から抜け出しました。





「…はぁはぁ。すみません…。」

「なんで謝るんだよ。…たまにはいいんじゃねぇ?」


「…俺…幸せです…。」

「…くすっ、野分のココ…まだ…ガチガチだ。」

「…ヒロさん…ここに乗ってください。今度は、俺が…」


「……野分。」





「……パパ?…お父さん?」


リビングのドアを開けると、


「わっ///ひ…ひろ!?」


慌てた声を出したのは、ソファに腰かけているお父さんで…


…あれ?

…パパ…いないです。


探そうとしたら、パパに買ってもらったワンコの大きな耳が目の前に垂れて見えなくなったです。



ボクがワンコの耳をどけると、パパがお父さんの膝のところで屈んでいるのが見えました。

心なしか、唇がしっとりしているような…


「パパ、どうしたですか?」

「……べ…べ別になにも…///。」

あれ?

…赤くなったです


「…ひろ。どうしたの?」

お父さんが、腰のあたりをモゾモゾさせながら立ち上がりました。


「喉が渇いちゃったから、水を飲むです。」


「そっか。」


ボクは、お父さんが注いでくれたミネラルウォーターを飲み干したあと、コップを返しました。


「ありがとです。お父さん達は、まだ寝ないですか?」

「…うん。…今から…セッ…いてっ!」

うわ…パパの拳が炸裂したです。


「野分っ!」

パパは、なぜかお父さんが「セッ…」って言うと真っ赤になって怒ります。


「ボ…ボクはワンコと寝るので、ごゆっくりです。」

「うん。おやすみ、ひろ。」

「はいです。パパ、お父さん、おやすみですー」


たぶんパパ達は、「セッ…」の続きをすると思います。


「セッ…」の次の朝はパパ達がすごくラブラブなので、邪魔しないようにボクはワンコと先に寝なくちゃです。




(おわり)

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