FF\ 闇色の瞳

□第五章
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闇の中に、少年はいた。

光はない。
けれど、辺りを見回せばこの空間の輪郭が見える。

彷徨うことに疲れ果てた頃に、たどり着いたのは少し開けた場所。

そこに、一人の男が椅子に座り込んで目を閉じていた。

気味が悪いほど白い肌に、闇色の髪、漆黒の装束。
まだ年若いように見えるが、その顔に宿る表情はあまりにも冷たかった。

少年が歩み寄ると、男は目を開けた。
闇色の瞳だった。
何も映り込まないほどに暗い色をした、闇の瞳。

「来たか」

男は不意に呟くと、少年に歩み寄った。
すると、闇色の中から伸びる白い手を少年に差し出す。

少年はそれをただじっと見つめる。
男はその少年をじっと見つめる。

少年は動かない。
瞬き一つせず、男の手を見つめる。

男は動かない。
ただ貫くように視線を少年に注ぐ。



やがて、男は差し出した手を戻した。

「未だ、その時に在らず」

何処からか、別の男の声が響いた。
と、闇色の瞳の男の背後に、別の男が現れる。
深紅の瞳をした、長身の男だ。

「時を急く必要はない。いずれ時は満ちる」

不意に背後から現れた男は、無機質な笑みを浮かべて少年を見つめた。

少年は金の瞳で睨むように視線を送る。

しかし、深紅の瞳の男は涼しげに視線をかわすと背を向けた。

「『ミステルテイン』は動き出した」

深紅の瞳の男は、闇色の瞳の男に告げると、再び姿を消した。
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