FF\ 闇色の瞳

□第三章
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ビビは、ただ驚き目を見張るだけだった。

けたたましい叫びが、白銀の欠片と共に降り注ぐ。

ビビがつい先程まで見上げていた窓硝子を破り、その透明な雨に姿を眩ませ、侵入してきた者の咆哮。


闇色の体色に紅い瞳を隠した、小さな侵入者だった。

リスのような愛らしい姿の、小さな小さな――暗殺者。

突然の事態に最も早く反応したのは、当然この状況を作り出した張本人だった。
体長程もある尻尾が殺気を放ち、揺れる。

行動を起こすまでに一瞬の間もなかった。

何が起こったのかを理解する暇も与えず、ぞろりと生えた牙が駆ける。


「っ……危ねぇっ!」


しかし、闇色の使者はビビの首元をえぐることなく弾かれた。

第二に状況を理解したパックが、闇色の体躯をしたモンスターを寸前で蹴り飛ばしていたからだ。


しかし、それで怯むほど軟弱なモンスターではない。

すぐさま身を翻し、邪魔者と判断したパックに襲いかかる。

「――ちっ!」

驚嘆すべきスピードだった。
確実に急所を狙い、飛び付いてきたモンスターの牙が肩をかすめる。

防護魔法『プロテス』のかかった装束が、紙切れのように裂けた。



辛くも回避したパックだが、ここに力量の差が生じる。

獰猛なモンスターのようにはいかず、一瞬回避後の隙が生まれたのだ。
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