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□奮闘するナナキ
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その報せを受けたのは、ちょうどミッドガルに向かっている最中のことだった。
ミッドガル病――正式には『星痕症候群』――について調べる為に、オイラは大地を駆けていた。
世界を記憶する旅はひとまず後回しにして、ユフィの頼みを聞くことにしたのだ。
それに、事の真相を明らかにすることだって、世界を記憶する旅から大きくかけ離れたことじゃない。
もちろん、ミッドガル病でオイラの大好きな人たちが苦しむのを見てられない、って理由もあったけど。
暫く走りっぱなしで、ちょっと休憩しようかな、と思って足を止めた時、携帯電話の着信音が響いた。
オイラの頭の上で心地よく揺られて、今にも眠りそうなケット・シーが、突然鳴り響いたピアノの旋律に飛び起きた。
「な、何事や!」って慌てるケット・シーをよそに、オイラは首元に巻き付けた携帯電話の通話ボタンを押す。
……一応、オイラだって携帯電話ぐらい持ってるんだよ?
昔ミッドガルで配ってたやつだけど、まだまだ使えるくらいには最近のモデルだし。
我に帰ったケット・シーが、携帯電話から伸びるイヤホンを素早くオイラの耳元にくっつける。
悔しいけど、こうしてもらわないと相手の言葉が聞こえない。
それでも、改良してもらっただけ感謝しないと。
オイラはマイクを口の前に持ってきて固定すると、返答した。
「もしもし」
ただこの電話の弱点は、通話相手が誰かは声を聞かないと分からないことだ。
首元につけたままだと角度的に画面は見れないし、見ようとするとわざわざ外さなきゃいけない。
オイラの番号を知ってるのは、まだケット・シーとシドとティファしかいないから、実際はそんなに困らないけど。
そんな理由から、オイラは相手の反応を見るしかない。
シドかティファか、どっちかだ。
『私だ、ナナキ』
ああ、ヴィンセントだ。
つい最近会ったはずだけど、何だか妙に懐かしい。
どうしたんだろう。
今度また会う日のことかな?
でもヴィンセントはあんまり乗り気じゃないからそれはないか。
オイラは毎月だっていいくらいなのに。
一瞬にしてそんなことがオイラの頭の中を駆け巡ったけど、オイラはもっと大事なことに気付いた。
「え……ヴィン、セント!?」
予想外の相手に、オイラは思わず裏返った声を出してしまった。
あれ、でも確かヴィンセントは携帯電話なんて持ってなかったような……
『今、何処で何をしている?』
ヴィンセントは狼狽えるオイラを無視して、尋問のように聞いてきた。
いや、元々低い声だから冷たく聞こえるだけだけど。
でも、ヴィンセントの声は、明るい雰囲気ではなかった。
「えっと……オイラ今ミッドガルに向かってるところだけど」
ゆっくりミッドガルの方向へ歩きながら、とりあえず質問に答える。
話の流れが全く予想できなくて、オイラはただ電話の向こう側の言葉を待った。
まさか『これからお茶でも』なんて話ではないだろうし。