その他小説

□奮闘するナナキ
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「そうか、ならば都合が良い。仲間全員に、ミッドガルに集結するよう連絡してくれ」

「……えっ?」

いきなりのヴィンセントの言葉に、足が止まった。
暫く意味を図りかねていると、ヴィンセントが通話を切りそうな気配がしたからオイラは慌てて口を開いた。

「ヴィンセント!ミッドガルで何が起こってるの?」

すると、オイラの声が聞こえたのか、ヴィンセントはややあって答えた。

『まだ猶予はある。だがもうじき――』

不吉な間が空いた。

『――ミッドガルで、殺戮が始まる』

ぴくんと耳が跳ねた。
シッポが固まって、毛が逆立つ。
ざわざわと嫌な感覚が身体中を走った。
オイラが何か言おうと口を開いた時には、ヴィンセントは通話を切っていた。
『頼む』とだけ添えて。

オイラは一つ深呼吸して、身体の中の悪いものを吐き出した後、仕切り直すように言った。

「ケット・シー。シドとバレットに連絡して。オイラはユフィに連絡する」

話の内容は全部聞いていたのだろう、ケット・シーは珍しく無言で頷いた。
ケット・シーは素早く無線機を取り出すと、シドへ連絡を取り始める。

オイラも携帯電話の電話帳を開くと、ユフィの番号を探し当てる。

この時になって、オイラは初めて電話帳を使うことに気付いた。
ケット・シーから教えてもらって全員の番号は知っているけど、今まで自分から電話をかけたことがなかった。
人間と違って手がないオイラには、電話帳を開くのにも一苦労だからだ。
ボタンを大きくしてもらったけど、ほとんど焼け石に水状態。

何とかユフィに発信できたのを確認すると、オイラはミッドガルに全速力で駆け出した。

耳元で鳴り響く呼び出し音。
ユフィらしく何だか底抜けに明るい曲だ。
でもちょっとオイラの耳には痛いな。

しばらく顔をしかめてそれに耐えていると、不意に呼び出しが止んだ。
一瞬の静寂にほっとする。

「はーい、ユフィちゃんだけどどちら様〜?」

――ああ、ユフィは今日もユフィだ。
そんな風に思わせるくらいに、ユフィは相変わらずだ。
だけど今はそんなことを考えてる場合じゃない。

「もしもしユフィ?オイラだけど」

若干焦ったように早口になってしまった。
でもその方がユフィも察してくれるかも。

オイラがユフィの返答を待っていると……一拍後、ユフィが盛大に吹き出すのが聞こえた。
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