ギアス連載

00.
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誰も居なくなった
アッシュフォード学園 。


以前学生で溢れ、日々何かとお祭り騒ぎをしていたあの快活さはもう、
そこには無かった。


今はただただ
とても静かで、暗いだけ。



『…学校…行って…ね』
息を引き取るまぎわ。
彼女が口にした最後の願い―…


〈ユフィ…〉


『私はとちゅ……止めちゃったから』
〈僕は――…〉


『私の分も……ね…』











出逢





「静かね」
「…―」

突然の声に勢いよく振り返るスザク。今の今までココに居るのは自分一人だと思い込んでいた……。いや。そのはずだった。


だが誰も居なかったそこに、今一人の少女が立っている。


誰も『居てはいけない』コノ場所に…―。





自分より低い背丈に、華奢な体つき。
そして


(ニッポン…人……)


一見、彼女の整った顔立ちはブリタニア人とそう変わりなく見えるが、確かにこの国の…ニッポンの…少女のもので…。


それは彼女の質素な服装や出で立ちからも分かる。


だがスザクには、それ以上に迫害・蔑み…それらの中で生き伸びてきた者だけがもつ影を、彼女に色濃く見た気がした…。




「誰も居ない」



自分の居る場所があたかも慣れ親しんだ場所のように、静まりきったアッシュフォード学園を見回し呟く少女。



(普通ならとても考えられない組み合わせだな…)



ゲットーの少女とブリタニアの学園。




「キミは」
「貴方はココを辞めるの?」


スザクの質問を許さず
少女が静かに問う


「ナイトオブセブン」
「枢木スザク」

その言葉にスザクの頬を嫌な汗が伝う。


「…何故…それを…」
絞り出した声は酷く掠れていて弱々しかった。



(自分がナイトオブラウンズに…ナイトオブセブンになったコトは皇帝陛下以外まだ誰も知らない……いや…まだ知られてはいけない上級秘密事項だ…―――)


なのに


―…何故知ってる?


自然と身構えるスザクをよそに、少女は顔色1つ変えることなく、スザクの焦りを読み取ったかのように口を開く。



「何で私が知ってるか、気になる?」
「……ふざけてるつもりかい」



掴みどころが無く、ドコかふざけているようにも取れる少女に冷ややかに問い返す。だが彼女はそれにたじろぐ事も無く、それどころか楽しげに口元に笑みを浮かべ答える。


「さぁ〜。取り方はアナタの自由よ」


何者なんだこのコは。


それに何故こんな時間に、誰も居なくなったアッシュフォード学園に彼女は居る…――?





コレは偶然か…?


―…それとも




「キミは何でココに居る」
「アナタと同じじゃない?」
「………」
返された答えにスザクは眉をひそめる。


「此処に居られなくなったからお別れしに来たんでしょ?」


その言葉に更に彼女の真意がみえなくなる。彼女の言ってることは確かに当たっている。


自分はこの学園に別れを告げに来た。

きっと

二度と戻ることのないこの学園に……。




だが、ニッポン人の彼女がこの学園に何故別れを告げに来る必要がある?


(謎だらけだ…。)













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