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□喜んでくれるかな
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・トリップ
・ハロウィンの続編的




「ねェ、エドは甘いもの好き?」

「…なんでそんなこと訊くんだよ」

「何でって、今日はバレンタインデーだからさ。エドにプレゼントしたいなァ…て」



て…照れるじゃないか。

本を読む手を止めて、エドは私を見た。



「――ばれんたいんでーって何だよ?」



うわお。

ハロウィンの時(※片手にはキャンディーを参照)と同様、この世界にはバレンタインも存在していなかった。

女の子の一大イベントなのにな。
いつもは挑戦しない子でも「よし、今日こそ告白しちゃうぞ★いえい!」って想いを決めてチョコを作るのにな。湯銭を知らず失敗したチョコを渡したり。…冗談はさておき。

なんて悲しい世界なんだろう。思わず呆れ顔。



「おい、なんなんだよ。そのばれんたいんでーての」



そんな黄金の瞳で私を見ないで。
そんな真剣な瞳で私を見ないで。

な…なんだか恥ずかしいぞ。



「なァ…なんだよ?」

「…お、」



じいっ



「女の子…が、」



じいいっ



「女の子が好きな人に…、」



じいいいっ


…………………無理。


「っこ、」

「こ?」


「こっち見ないでよー!!!」

「でええ!!」



呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん。

ウィンリィ愛用スパナ。


愛するエドに見つめられちゃ言えません。恥ずかしすぎます。



「ちょっ…おい、どこ行くんだよ!!?」



逃げ出しちゃいました。











「―――あああ…もうなんで逃げ出したんだよ私…!!」


今戻ったらめちゃくちゃ気まずいっつーの。
だから、なぜか私は司令部にいた。

ほら、一応国家錬金術師の顔見知りってことで宿とか取れるわけよ。…結局エド頼ってるし。

溜め息を吐いた。



(…この世界にチョコはないから…、お菓子とかあげたら喜んでくれるかな)



枕に顔を埋めた。



(アルにはあげられないもんな…、喜んでくれるだろうけど食べれないから寂しさ増しちゃうし…)



時計の音が聞こえる。

今、何時だろう。

エドの所を飛び出して何時間経ったのかな。意外と30分とか短かったりして。



(―ああ、エドだから長く感じちゃうのか)



何だよこの少女漫画的ヒロインの発想は。私こんなのだったっけ。

なぜだか笑えた。



こんこん



「………、誰?」



ドアをノックする音。
顔を上げて呟くように訊く。



『ボクだよ』

「……アル」



扉を開けると、大きな鎧がいた。

手には、一輪の赤いバラ。

…バラ?



「あのさ、これ兄さんが渡して欲しいって」

「…私に?」



バラの花を受け取る。
黄色いリボンが結ばれてるそのバラってキザだな。エドのくせに。



「あのね…バレンタインデーのこと、ボクが教えちゃったんだ」

「え、いつ?」


私が飛び出していった後?

そう聞くと、おずおずとうなずいた。



「女の子だらけでお菓子は買えなかったみたいで」

「それでバラ…、なんかエドらしいね」

「……ね、兄さん甘いもの好きだよきっと」

「…うん。アルにも後で何かあげるね!」

「!…えへへ」

「エドのところに行ってくる!!」



待っててよ、今から行くからさ。



喜んでくれるかな
(エド!!!)

気持ちは届いてくれたかな


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