拍手SS

□全てを許せる気がした
1ページ/1ページ

エド夢






静かな図書館の中で、響くのは時計の音だけ。

今でちょうど2時間。

さて、これは何の時間でしょう。



「……………」
「……………」


正解は、私とエドが図書館に来て経った時間。
そして、エドが私にかまってくれない時間。


エドの集中力は正直半端なくて、調べ物をするときはめちゃくちゃ集中する。
だから、私はいつも横でそれを見てる。


でもさ、せっかく久しぶりに会えたんだよ?

「……ねェ、エド」

ちょっとはかまってください。


アルフォンス君と旅をするエドと、中央に住んでいる私。
会える時間は限られているのに、いつも調べ物。


「何の調べ物?」

そう訊いても、

「お前には関係ない」

その一点張り。


なんだか、疎外感。


「……そっか…」

「………」


エドは分厚い本からちらりと目をこちらに向けた。
そして机に左手をついて、正面に座る私に右手を伸ばしてくる。

その手は私の後頭部に回り、力強く私を引き寄せた。


「エ、む」

変な声が出た。

だって、突然キスされたから。


あのエドが。照れ屋で恥ずかしがり屋のエドが。不意打ち。


「――もーちょっと経ったら教えてやるから」


なぜだか、


全てを許せた気がした。
(ねェ、ちょっとってどれくらい?)
(るせェ!黙ってろよ…)
(…エド、照れてる?)
(笑うな!)

図書館では、静かにしましょう。


 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ