Treasure

□指輪の跡
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「ああ…。今回と同じように不安だったからな…。存外、当たっているのかも知れんな」

そう言って苦笑を漏らしたアシュヴィンは、不意に切なげな色をその瞳に宿すと、ギュッと千尋の背に回した腕に力を込めた。


「アシュヴィン…?」

「…すまない、千尋。俺はあの誓いを破ってばかりだ…」

訝しげに夫の名を呼んだ千尋の耳に、自嘲するかのような声が届く。

その声色にも内容にも、真摯に自分を思ってくれている気持ちが溢れんばかりに滲んでいるのを、感じ取れない千尋ではない。

不器用すぎる行動にまた一つ笑みを零して、背に回していた腕を夫の首筋に回す。

「いいわ、少しずつでも」

「幾度も間違えてしまっているのに、構わないのか…?」

「いいの。だって、今回のも私のため、なんでしょう?」

「ああ。だが…」

「本当にいいの。私も神経質だったかもしれないもの。…ごめんなさい」

そう言って苦笑いした千尋の言葉に瞠目したアシュヴィンは、ようやく硬さの無くなった笑みをはいて、触れそうなほど近くにあった妻の唇に己のそれを落としていった。

*****

あの諍いから、ひと月近くが経過したある日の早朝。

日が昇る間際の少しずつ白んできている空の下、根宮の練兵場内にある弓道場には、いつものように皇妃の姿。


普段の練習時よりも幾分楽しげな彼女の弓手には、とある変化があった。

的に向かい、狙い定めて弦を引き絞る最中にも、不意に視線がそこに向かう。


──薬指に燦然と輝く、誓いの証へと。


...end
後書き↓


大変おまたせいたしました、2500打を踏み抜いていただいた蒼樹様に捧げさせて頂きますっ!

えーっと…リブをカッコよくアシュ千に絡ませるにはどうしたらいいか、長々と悩んでいたのですが、結局こんな登場の仕方に…orz
リブ、もっと調子に乗せた出方(NL的に、ですよ!)にもさせたかったのですが、リブちひ書かないから出来ないという…!←BAKA!

しかもこれ、後半はともかく前半甘みが無さ過ぎる気がします。
ほんっと、いつでもというお言葉に甘えすぎな域で遅すぎな上に、こんな出来になってしまい申し訳ありません…。

夫婦喧嘩の度に、互いの愛の深さを思い知って惚れ直してるといい! という酷い妄想の産物です。
しかもこのお題…いえ、何も言うまい…(そのうち制覇してしまうかもですがw


戯言は置いといて。リクして下さった蒼樹さま、ここまでお付き合い頂けた皆様、有難うございました。

2009.4.1 由貴

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由貴様よりいただきました。
2500打踏み抜きの際にリクエスト。
常世夫婦とリブの甘いお話。
なんというか、嫁大好きな殿下のヘタレ具合(失礼…)にニマニマしながら読ませていただきました。
殿下は普段は格好いいんですが、千尋の前で見せる年相応な戸惑いとか不器用な所が出てて萌えさせていただきました。
そんな主夫妻を見守る大人なリブにこれまた…w
由貴様、ありがとうございました。
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