Treasure

□常闇に射す一筋の光条
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「なんだ?」

不機嫌を隠しもしない、キツい視線を投げられても、遠夜は物怖じひとつしない。むしろ優しく笑っていて。

(帰ろう、アシュヴィン。…お前の城に)


ーー実際、エイカに指摘されたとおり、アシュヴィンが遠夜を気に入っているのは確かで。

残っていたら、自分の巻き添えで殺されていた可能性もあったのに、逃げていいといったのに諦めずに付いてくれた強さも。
それなのに、まるで鳥類の子どもが親の後を追うように、自分をトコトコ追いかけてくる幼い可愛らしさも。

母が亡くなって以来、長らく忘れていた暖かさに…癒されていた。それを傷つけることになるかも知れないのが怖かった。


遠夜の笑顔を、表情を動かすことなくしばし見つめていたアシュヴィンは、フッと表情を和らげて笑うと無造作に目の前の薄青の頭を撫でた。

「…もう簡単には帰さんぞ。お前がそうさせたんだからな」


こくりと頷いて笑みを深めた遠夜を連れて出て行こうとするアシュヴィンの背中に、思い出したようにエイカの声がかかる。


「ああ、黒雷様。たった今思い出しましたが、トオヤは冬の生まれでしたね。確か年明けの翌日…もうすぐですね」

その言葉に一瞬足を止めたアシュヴィンは、首だけで後ろを向いて、「そういうことは早く言え」と吐き捨てて、自分の城へと帰っていった。


幽宮に帰ったアシュヴィンを迎えたリブは、森に帰すために連れて行ったはずの遠夜が共に帰ってきたことに驚く様子もなく、「や、丸く収まってよかったですね」などと言っていて。

読まれていたことに若干不機嫌になったアシュヴィンが、それでも年明けの宴兼遠夜のお披露目の宴を盛大に開いたのは別の話…。



...end
後書き↓



遠夜ハピバだと主張したい物!
どこがだ、宴の方を真面目に描け、との突っ込みは華麗にスルーさせてください。

だって書いたら絶対に腐臭漂う出来に…ゲフゴフ。


あくまで幼少期の話なので、&な感じで、ほのぼのなものを書きたかったのですが。

リブや遠夜はアシュヴィンにとって、ほとんど気を抜けない周り敵だらけの幼少期の中での、数少ない腹の底の探りあいをしないでいい臣下兼友人、みたいな関係だといいなというのが私の願望だったりします。

序章で柊が遠夜を呼び出せる辺り、きっと柊がレヴァンタに付いた後に遠夜はあちらに攫われるんだと思ってます。
純粋に、遠夜の意思であちらに付こうとするとは思えないので!


あー…年明け第一弾がこんなんですいませんorz

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございますm(_ _)m

2009.1.2 由貴



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「笹百合の庭」由貴様より拝領。

チビ遠夜、激カワ過ぎるっっ!何だこの可愛い妖精さんは!とくらくらしつつ、やっぱり小さい時からしっかりしてる殿下、そしてそんな殿下を把握しつつ、出過ぎず引き過ぎずに仕えるリブとの主従関係に萌えw束の間、殿下の癒しになった事でしょう。&な感じで終って何やらほっとしたような、そうでないような…(おい!)
由貴様、素敵な創作、ありがとうございました。
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