Treasure

□お誕生日にいただきました。家宝です。
1ページ/7ページ

こくり、と白い喉が上下する。
夜闇に浮かび上がる白の肌は羨むほど滑らかで綺麗だ。
それを見ながら飲み下す酒の甘さは例えようもない。
酔い痴れてくらくらしているのは酒のせいか彼の人のせいか。
千尋はまた一口酒を含むと、味も分からぬままに喉の奥へと追いやった。
盃に浮かんでいた桜の花びらだけが舌の上に残っている。

「…まだ酔いが足りぬようだな」

酒を注がれて千尋は小さく喘ぐように息をした。
慣れないどころかこんなに酒を飲んだのは初めてだというのに、まだ飲めと言うのか。
恨みがましく視線を送るも、するりと交わされて酒を注がれる。
零れそうなほどに注がれたそれに口をつければそれでいいとでも言うように忍人が頷いた。

今日は異世界における千尋の誕生日だった。
尤もこの豊葦原とは暦が違うために生誕の式典はまだ先のこととなっている。
しかし風早から異世界の暦では千尋の誕生日であると不意に聞かされた忍人は、言い尽くせぬ不満を抱えて千尋の室を訪れていた。
最初はただ言祝ぐためだけだったのが、千尋が祝いにと柊に貰った酒を出してきた辺りで雲行きが怪しくなり、まるで幼子が駄々を捏ねるかのように「俺は知らなかった」と千尋を責めてしまったのだ。
単に嫉妬だと分かっていても他の男が知っていて恋仲である自分が知らなかったというのは気分が悪い。
しかも贈り物まで受け取っているとなれば尚更だ。
忍人は酒を空けるまでは許さないと千尋を理不尽に罰することにしたのだ。
しかし酒を飲みつけない千尋にとって、酒がたっぷりと詰まったそれを一人で空けることは不可能に近い。
ならば二人でと先程から杯を重ねているものの、忍人の方が圧倒的に酒に強く、千尋は限界を何度も訴えながらちびちびと酒を舐めている状態だった。

「もう…無理です…っ」

吐く息には自覚出来る程の酒精が混じっている。
心臓はばくばくと強く早く脈打ち、今にも壊れてしまいそうだ。
何とか飲み干した杯を手にしたまま、千尋は許しを求めて懇願の視線を送る。
しかし忍人はそれを許さず、手にしていた盃を一気にあおると飲み込まずに唇を重ねた。
隙間から流れ込む強い酒。
飲み込むまで許さないと言わんばかりに絡み付く舌。
舌の上の花びらが奪われて、苦しさに喉を鳴らせばまた忍人が杯をあおる。
重なる唇の温度に全身の血が沸騰するのではないかとさえ思った。
強かに酔った頭ではもう正常な判断が下せない。
酒と舌に翻弄されながら、千尋は小さな手を忍人の背に回してぎゅうと引き寄せた。

身体が熱い。
どうにかしてほしい。

「忍人さん…っ」

助けを求めて名を呼べば、蒼黒の瞳が欲を宿して艶めいたまま緩む。
からん、と杯が投げ捨てられたと同時に唇が塞がれた。

常より性急な手が千尋を暴いていくのを止められないまま、この世に生を受けた日が激しい情動に包まれたまま終わっていこうとしていた。



蒼さんハピバおしちひ…なんつって。
すみません蒼さん…orz

************

なみだいろ。モバイル、ゆずさん(お嫁様ですw)からいただきました。忍千ss。


大変ごちそうさまです。ゆずさんw
ノリノリな将軍…良いじゃないですか!好きです。こんな攻め将軍w
ありがとうございました。本当に色々とお世話になっておりますです。大好きです。

2009.04.10 蒼樹
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ