小説

□マジカルセーラー
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「なあ、セックスしたい」

「…はい?」

「だーかーら、セックスしたいっつってんの。一回で聞き取れよ」

「ここで?」

「そ、ここで」

「今」

「ん、今」

そう言って咢は淡々と応えると上体を起こしオレの首に腕を回して艶めいた笑みを浮かべた。まあ勿論こんなあからさまなお誘いをお断りするなんて思春期のオレに出来るはずもなく、呆気なく咢にキスをして行為を開始した。
オレたちがセックスをするきっかけは9割咢が誘う、残りの1割がヘタレなオレがいざって時の勇気を発揮したときだ。恋愛に慣れていないオレにはいつどのタイミングでどういう風に誘えばいいのかわからず、悶々している内に咢がオレを誘って行為に及ぶ。一応オレがタチなんだけどいつも咢にリードされっ放しだ。でもこの関係性に密かに依存している自分もいる。オレってほんと、根っからのヘタレだとつくづく思う。
オレがベッドの周りのカーテンを閉めて外界と隔離してしまってから咢の肩を掴みベッドに押し倒そうとしたら、オレの肩を掴んで「ちょっと待て」と言った。今すぐにでも咢に喰らいつきたいのに待てと命令されたオレは抗うことなく素直に待てをした。
いそいそと細い手首から黒いゴムを外した咢は、髪を後頭部辺りまで持ち上げると手にしたゴムで結い上げた。そう、これは正しく、男のロマン、ポニーテールである。

「ムラムラする?」

「いやー、もう余裕で」

まだ何もしていないのにこの制服にこの髪型ってだけでオレの体温が上がりつつあった。恐らく女子も脱帽のこの可愛さに対して上手く褒める表現が出てこないオレの貧困な語彙にイライラしていると、咢はくすっと小さく笑ってからオレの手を掴み、白くて柔らかい咢の頬へと持っていった。

「ほら、触りたいんだろ?いっぱい…」

「そりゃ…まあ…」

「まだるっこしいな…じゃあこう言えばいいのかよ。……触って?」

語尾を少し上げてから俺の手を頬から首へ、首から鎖骨へと滑らされていく咢の目はオレの目を射止めたままで、オレが「咢」と呟くと首を傾げて小さく笑った。とっている行動はひどく色っぽいのに、それとは対照的な幼い表情をとる咢のアンバランスな部分にいつも翻弄させられる。
オレの手を握る咢の手を逆に握り返しこちらへ引き寄せると、華奢な咢はすっぽりとオレの胸に収まった。甘えるようにオレの胸に額を押し当てる今日の咢は、ポニーテールをしているせいで真っ白い項が露になっている。甘える咢の頭を撫でながら、その眩しい項に唇を落とし滑らかな肌を堪能する。敏感な咢は唇が触れただけでびくっと震えて甘い息を吐き出した。唇をゆっくりと離し今度は少し強めに吸い付くと、いつも通りおもしろいくらいにくっきりと朱色が刻まれた。咢の肌は柔らかくて白いから痕がつきやすいようだ。キスマークを嫌がる子が多いなんて噂を耳にしたことがあったから、初めての時はつけていいか確認をした。そして咢の返事ときたら「カズのものって、印つけて」という股間にクリティカルヒットな攻撃だった。余談ではあるが、オレと二人きりの時だけ、咢はオレのことを『カズ』と呼んでくれる。

オレが項から首筋へ向かって舌先を這わせてる間、咢は時折震えながらもオレのニット帽を取り去ってオレの髪を柔らかく撫でた。

「っ…オレ、この髪好き」

「ありがとう」

「……カズは?」

「え?」

「オレのどこが好き?」

「……全部」

「漠然とし過ぎだろ」

「じゃあ、目かな」

「少なすぎる」

「えー…」

まあ咢くんの我が儘女王様っぷりは今に始まったことじゃないから慣れっこだけど。困ったように笑いながらセーラー服のスカーフを解き前のファスナーを下ろすと幼さの残る胸がちらつき、その胸に触った瞬間に吸い付くような感覚を味わったことを思い出してはその記憶に誘われるがまま手を伸ばし呼吸をする度動く胸にそっと触れる。少し冷えた手で触ったせいかびくっと震えた。咢の胸はぽかぽかしていて何度か咢の胸を撫でているうちに冷えていたオレの手までぽかぽかと暖まってきた。撫でる度つんと尖ってきた乳首を人差し指の腹で押しつぶすと、咢が鼻から抜けるような声で小さく鳴いた。それが子猫みたいでなんだか可愛くて何度も何度も突っつくと、子猫のような鳴き声から艶めいた色気たっぷりの喘ぎ声に変わった。


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