小説

□拍手
2ページ/2ページ


「っああああ!」

「ちゃあんとわかってるよ、…咢の好きな箇所くらい」

この台詞の後、そこを何回も突き上げられて絶頂は直前まで迫ってきた。体は熱いのに、熱すぎるせいか頭の中は逆にすーっとしてきて色で現すと、白。そう、もう何かを考える余裕なんてない。頭の中は真っ白になる。
ああ、嘘。頭が真っ白になったって、アキラのことがたまらなく好きだということだけは意識していられる。

「っ…あぅ、ダメだ…あっ、ああっ…も、イ、く…イク!」

「っ…オレも…」

「んぁ…っ!あ、……あ、きら…アキラぁ…!」

「…アギト……っ!」

アキラが力強く突き上げられてオレが締め付けた瞬間、オレが最奥を突き上げられてアキラの背中に爪を立てた瞬間、白い色は白を超越して眩しくて形容しがたい色に昇華した。その色が見えた瞬間オレ達はほぼ同時に射精した。
しばらく抱き合ってお互いの体温を感じた後、アキラはゆっくりと自身を抜く。ちょっとだけ、寂しい。

「っはあ……ア、キラ…?」

「…ん?」

こうして一緒にイッた後、アキラは必ずオレのことを壊れ物を扱うかのようにそっと口付けて乱れた前髪を整えてくれる。その都度オレはどうしようもなく愛しい気持ちと切ない気持ちが入り乱れて苦しくなる。それが柄にもなくオレを素直にしてしまうドラッグだ。

「………あの、さっきの…ほら、……っあれ、冗談だから…」

「ん?なんのこと?」

「……もういい」

オレの素直になった気持ちを返せ。強力なドラッグの効果はテメェの見当違いな返事のせいで見事に中和されていつものオレに戻ってしまった。ばかばかばか。
アキラは意地悪だ。オレに勝ち目のないゲームを押し付けたり、そのゲームの最中に卑怯な台詞を言ったり、わかっていることをとぼけたふりしたり。ばか、アホ、ファック、もう知るか。
悔しくてオレがそっぽ向くとアキラが後ろから抱きついてきた。イッてから二回目のキスは謝罪ととっていいのか。

「うーそ、ごめん。ちゃんとわかってる」

「…あっそ」

頭を撫でるな、ゲームのくだりどころか今こうして意地張っていることすらどうでもよくなるだろう?

「他の女なんて作ったりしないから、こっち向いてよ」

「……」

しかめっ面のまま相手の方に向き直り、優しく微笑んでいるであろうその顔を見上げると、やはりそこには拗ねていた気持ちなんてどうでもよくなってしまう程優しい笑顔でオレを見つめていた。

「女作ったら殺す」

「殺すとかんーな可愛い顔して言わないの」

オレの頬を撫でる大きな手に頬ずりしてから目の前にある胸板に抱きついた。
はいはい認めます、完敗だ。オレは馬鹿みたいにアキラの事を好きでいるみたいだ。本当に馬鹿みたいに。ただ、いつもヤッた後に自分を映す鏡で発見する無数の赤い痕。相手も同じくらい馬鹿になっているって信じてもいいのだろうか。まあ、睡魔が襲ってきた今となってはもうどうでもいいことだけど。



------------

初代拍手文です。
お粗末様でした。

姫様

前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ