小説
□abyss
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『今から遊びに来る?』
「いや、仕事で疲れてんじゃねーの?」
『全然、今日はほとんど休暇に等しかったよ』
「そーだったのか…」
『このゲームまだ途中なんだろ?取りに来るついでにさ』
「じゃあ、行こうかな…」
正直辛い。オレが抱かれている時に囁いてくれる「可愛い」とか「好きだ」とかは、どこまでが本当でどこまでが嘘?前だってそうだった。オレのことが好きだと言いながら、任務中のアクシデントで知り合った女と逢瀬を重ねていた。
辛い、辛い、つらいつらいつらいつらいつらい。わかりやすく境界線を引いてほしい。セフレならセフレ、恋人なら恋人。そうすればオレは変に期待しなくて済むのに。
いや、本当はオレ自身が引くべきなんだ。オレが変なプライドを捨てて伝えればいい、「好きだ」って。でも言えない、今のオレに真実を知る余裕なんてこれっぽっちもない。そもそもプライド?何かっこよく言ってるんだ。こんなのただの臆病だ。
本当はな、アキラ。あのゲーム忘れたんじゃないんだ。次逢う為のきっかけが欲しくてわざと置いて帰った。無様に縋りつく。アイツの性欲処理でももう構わない、とにかくアイツに抱いてもらえるという何かしらの権利に縋りつく。
縋りつく、ひたすら、縋りつく性に縋りつくんだ。
アイツの家に着いた途端さっきまでの気分の降下減少は一時ブレーキがかかり、いつものように接することが出来た。それどころか積もりに積もった感情が覆水してしまってオレから寝ることを誘ってしまった。
「咢、好きだよ」
激しく揺らされて意識が朦朧としてきたって、この言葉を聞き逃したりはしない。今日だけで何回この言葉を聴いたのだろうか。嬉しい、嬉しいけど、聞けば聞くほど疑心暗鬼になる。嗚呼、気持ちよすぎて、幸せすぎて、辛すぎて、苦しすぎて、好きすぎて、涙が出てきた。オレの涙をそんなに優しく拭うな、期待してしまう。
「アキラ……っ、…あっ…もっと…!」
アキラの「好き」を信じたい、けど、信じるのが怖い。過去が、現在を呪縛する。いつまでもいつまでも、いきなり独りぼっちになったあの瞬間を、アキラがいなくなってしまったあの瞬間を思い出してしまう。嗚呼、もう考えたくない。もっともっと、気持ちよくして忘れさせて?
「っあぁぁぁ!…やっ、…もっと、…アキラぁ……もっと…!」
「咢…っ」
「…アキ、ラ…っ、中に、出して…!」
こうして何も解決しないままオレはアキラに精を注がれるのを望む。アキラがオレを本当はどう思っているのか知りたい。でも、知ったら呆気なく終わりそう。だから、臆病のままでいい。都合のいい親友でいい。綺麗な付き合いなんて求めたりしないから。
だから
ずっとそばにいさせて
好きにしていいから
ずっとずっとそばにいさせて
嘘でもいいから
また好きって言って
セックスの途中でまた一つ、胸の中の黒い塊が増えた。
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過去に書いた駄文に手を加えてあげ直しました。
これがうちのデフォ、ヤンデレ咢です。
いかがでしょうか?やりすぎでしょうか?まだまだ甘いでしょうか?
そして何よりアキラのチャラ男っぷりにはアキラファンに頭を下げなければならん。申し訳ない。
アキラくんはとってもいい子です。
2011.03.31.
姫様