小説

□Lightning
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今日は朝から大雨だ。おかげで予定していたデートも中止、家でのんびり過ごすこととなった。初めは雨の日に狭い空間で湿っぽく過ごすのは反吐が出るとぎゃあぎゃあ文句を言っていた咢だったけど、今はおとなしくジグソーパズルに熱中している。かれこれ二時間休憩なしに1000個のばらばらになったピースを懸命に組み立てている咢、集中力は流石と言ったところ。そんな咢を読書の途中でちらちらと眺め癒されているオレは相当末期なのだと思っていたらオレの視線に気づいた咢がこちらに振り返って首を傾げた。

「どうした?」

「何でもない。…疲れない?」

「平気」

それだけの会話を済ませると咢は呆気なくパズルの方へと視線を戻し、ぱちぱちとピースを繋げて行くのであった。いい加減眺めるだけに飽きたオレは、栞を挟んでから小説を閉じソファへと置いて咢の背中目掛けてクッションを投げつけた。こんなあからさまな挑発をスルーできるほど大人でない咢は呆気なくオレの挑発に乗り、鋭い目つきで傍らに転がったクッションを素晴らしい剛速球で投げ返してきた。

「ファック!邪魔してんじゃねーよ」

クッションを顔の前で受け止めると再び咢にやんわりと投げ返してやった。

「二時間放置プレイされてるオレを可哀想だと思ってよ」

「知るかよ!ガキかテメェは!」
受け止めるやいなや即行オレへとクッションを投げ返してくる咢。この沸点の低さときたら海人さんを髣髴とさせる、血は争えないな。ていうか休日の日くらい上司のことは忘れさせてくれよ。

「そんなに怒るなよ」

「怒ってねーし!」

「怒ってるじゃん」

会話のキャッチボールと並行してクッションの投げ合いが続く。こんな下らないこと貴重な休日にいつまで続けるんだろうなんて思いだしたその時、咢は立ち上がりとどめの一撃を放とうとしていた。思わず制止させようとこちらも立ち上がると窓から眩しい光が入り込み、その直後地響きするほどの轟音が鳴り響いたと同時に部屋中は真っ暗闇となってしまった。どうやら落雷で停電したらしい。まるで咢の怒りが雷を引き起こしたようでなんとなくおかしかった。流石にこの状況でクッションが返ってくることはなかったけど、あまりにも急に静かになってしまった室内はなんだかとても寂しかった。それにしても先ほどまで意気盛んだった咢がうんともすんとも言わないのは少し妙だ。


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