novel
□生まれる感情
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俺が射精の余韻に浸っていると、高杉に腕を掴まれて上体を起こされた。ぼんやりとした視界の中俺はいつもの流れで高杉の足の間に顔を埋め込み下着から少し固くなったそれを取り出す。俺はいつも女にフェラをさせているときにこんなことよくするなぁ、なんて思いながら股の間でいそいそと舌や口を動かす女を眺めていた。けど、いざ自分がやるとなると嫌悪感はなかった。無論、それは相手が高杉だったからということがあったからだろうけど、案外やってみると愛おしいものだった。自分が与える刺激で微妙に脈打つ相手自身や眉を寄せる表情を見ては自己満足に浸る。ただ一つわかることは、高杉以外にやれと言われて出来るものじゃない。『好き』ということが前提だ。
俺は高杉の先端に口付けてから舌先を裏筋に沿ってなぞっていく。独特の味が味覚を刺激する、でも今の俺に味覚は関係ない。なんせ目先の好きな人物に五感を全て掌握されている。
先端を口に含んでから高杉を見上げると目が合った。相変わらず、何を考えているのかわからない右目だけど、その目は紛れもなく優しい目つきをしていた。
「テメェの目の色は、綺麗だなァ…」
「は…んっ、んぅ……」
硬度を増してきた高杉に自然と腰が疼く。
――高杉が欲しい。
そう思ってもう一度見上げると、小さく笑いながら髪をくしゃっと撫でられた。
「クク…、んーな物欲しげな目ェしなくてもすぐにくれてやるよ…」
そう言って俺の頭を掴んで離させると、俺を再び押し倒し足を広げさせその間に入り込み俺の口内に指を二、三本ねじ込んできた。意図がわかった俺は素直に俺よりも長い指に舌を絡める。この指に触れられている刀が羨ましい、そう思いながら丹念に舐めていると、十分に濡れた指を高杉は口から引き抜き、俺の秘部へとそっと濡れた指の腹を触れさせる。反射的に跳ねる肩と、ひくつく入り口。
「そんなに欲しがんなよ…淫乱…」
「ひぁっ…、ちが、…っ」
指が一本、俺の中に入ってくる。好きな人の指の腹が俺の内壁を撫でる、その事実だけで俺の胸はいっぱいなのに、相変わらず高杉の目は何を思っているのかわからない。
撫でられるたびにぞくぞくと快楽が襲ってくる。身を捩り手のやり場に困っていると、高杉がそっと俺の手を握ってくれた。その、なんてことない行為がすごく嬉しくて目頭がじんと熱くなって鼻の奥がくっと痛くなった。泣きそうってことだ。
指はいつの間にか二本になっていて、指が掻き回される箇所からは卑猥な水音が響いている。
嗚呼、もう耐えられない。
「う、…んぁ…ね、…高杉、…もう、ちょうだい…っ」
「切羽詰まっちまって…可愛いねェ…」
高杉は指を引き抜くと、俺の手を握ったままで俺の足を大きく広げさせてから先端を秘部へとあてがい、ゆっくりと熱を埋めていった。高杉に内部を圧迫されて苦しい、でも、気持ちいい。俺がさっきから考えていたことが頭の中でごちゃごちゃに掻き回される。
「ん、んぁ…あ、…たかす、ぎ…」
「…おい、あんま締め付けんな…」
「っ…ごめ、…ん、ねぇ、…全部入った?」
「…あぁ、動くぞ」
高杉が俺の耳元で囁いてから、ゆっくりと腰の律動が開始された。じわじわと湧き上がってくる更なる快楽と感情。腰を打ち付けられる度に好きっていう感情がたくさんになっていく。高杉の手を握ると、ぎゅっと握り返される。『好き』という感情を込めて高杉の右目を見つめてみる、けど高杉の目がどんな目をしているのかは、俺の視界が涙で霞んでてわからなかった。
俺から欠落していた感情たちは、『好き』というたった一つの感情を知ってしまっただけで、『悲しい』も『怖い』も『腹立たしい』も全部知ってしまった。気持ちが伝わらないのが『悲しい』、高杉と一緒にいられなくなるのが『怖い』、高杉に好きと伝えられない自分が『腹立たしい』。揺さぶられる度に、一個一個認識していた感情が混ざり合って、今はもう、全部まとめて『高杉が好き』。そう思った瞬間、涙が止まらなくなった。
「おい、…っ、何泣いてんだ…?」
「あン、ん、…ふぁっ、…な、いしょ…」
「…内緒、か…っ」
「はっ…、あッ、ん…そう…、ないしょ……っ」
俺は涙を流しながら微笑んでなんとか誤魔化した。いや、誤魔化せてないのかも。
ラストスパートに向けて激しく腰を揺さぶられる度揺れる足、もう一つ空いている手は高杉の頬へと持っていった。自分の頬に俺の手があると気づいた高杉は少しその手に頬ずりしてから俺の唇にキスをしてくれた。それが嬉しくて、大粒の涙が頬を伝った時、俺と高杉はほぼ同時に熱い白濁を飛ばした。
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片思いだろうがなんだろうがすることはしています。
お粗末さまでした。
2011.11.17.
姫様