novel
□散らばる赤
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「これはなァ神威、俺みてェな独占欲の強い奴がつけたがる赤だ」
「独占欲、へぇ…。じゃあ晋助は俺を独占したいの?」
「ま、そういうことだな…」
高杉の胸にすっぽりと収まったまま「ふーん」と呟くと、高杉を好奇心でいっぱいの青い瞳で見上げる。
「それって、どうやってつけるの?俺もしたい」
「つけてどうすんだよ」
「別にどうってわけじゃないけど、俺も独占欲強いみたいだからネ」
高杉の首に腕を回すと、同じ目線になり妖艶な笑みを浮かべてから目の前の唇に軽く口付けてから、黒髪で覆われた耳元で「教えてヨ」と囁いた。そんな神威の対応に喉奥でくつくつと笑うと、まだ髪が結われていない長い髪をさらさらと撫でて口角を吊り上げて笑みを浮かべる。
「んーな格好でここまでして…誘ってんのかァ?時間がありゃとっくにテメェ剥かれてんぞ」
「あはは、それもいいけど…今はこっち」
神威は人差し指で自分の胸元の赤い斑点をとんとんと指差すと、首を傾げながら早く教えてくれと目で訴える。その目を見て観念したように小さく笑うと、神威の後頭部を掴み自身の胸元へと顔を持って行く。
「強く吸ってみろ、すぐに同じように赤くなる」
それを聞いた神威は、新しいことを覚えた子供のような無邪気な笑みを浮かべてから、落ちてくる長い髪を耳にかけ、たくましい胸板にそっと手を添えてちゅっと強く吸い付いた。しばらくしてゆっくりと唇を離すと、同じように赤い斑点が刻まれた。その赤を見て神威は嬉しそうに頬を緩ませると、更にもう一つ赤い斑点をつけようと胸元に吸い付く。その様を微笑ましく見つめながら、高杉は煙管の吸い口を口に運び神威に煙が行かぬよう明後日の方向へと煙を吹き出す。首や胸元に五つの赤い斑点をつけてようやく満足した神威は、満面の笑みで高杉に抱きつく。
「…満足したかァ?」
「うん、満足。…こんなの女につけたことないや」
「そりゃあそれまでの女だったってことだ」
「そっか。……じゃあ俺は晋助にとってそれまでの存在じゃないってことでいいんだよネ?」
大きな目でじっとこちらを見つめて答えを待つ神威に、小さく笑みを浮かべながら髪をくしゃくしゃと撫でると神威の額に口付け、耳元で「テメェが一番だ」と囁く。あまりにストレートな言葉に思わず赤面するも、互いが互いに『それまでの関係ではない』ということを実感した神威は、甘えるように高杉の頬に擦り寄り目を閉じて目的の地に着くぎりぎりまでその温もりを堪能した。
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書いててこっちがこっ恥ずかしくなりました。
殺伐とした雰囲気の彼らにもたまにはこういう一面があってもいいですよね。
お粗末さまでした。
2011.11.10
姫様