novel

□ごっこ遊び
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「何してんだァ?おい…」

神威が振り返ると、布団の上で肘をつきくすくす笑いながらこちらを見ていた。神威はにっこりと微笑み煙管を口にしては、いつも相手がしているように煙を吸い込み口から煙を吹き出す真似をしてみせる。

「晋助ごっこさ、ちょっとでも晋助のこと知ろうかと思って」

「へー…、で?何か知ることはできたのか?」

「うん、いろいろネ」

高杉の問いかけに笑顔で頷くと手招きをされたので、神威はアンテナのような跳ね毛を揺らしながら高杉の元へ行き布団の上にちょこんと座ると、煙管を元あった場所へと戻した。

「コレ、晋助の味がした」

「コレって…煙管のことか?」

「へぇ、キセルっていうんだ。そう、キセルは晋助の味がするヨ」

「ほう、ならテメェは煙管咥えてりゃいつでも俺を堪能できるじゃねーか」

高杉は薄く笑みを浮かべながら神威の長い髪に指を通す。先ほどまで一人遊びをしていたため、直接的に触れられるのはなんだか久しぶりな気がして、髪に触れられるという行為がひどく心地よく感じられた。神威は不意に先ほどまで口にしていた煙管の残り香を、又は『晋助の味』を思い出し、髪に触れる相手の手を握ると、自分を優しい目で見つめるその顔へ自分の顔を近づけそっと口付ける。すると、唇と唇が触れるやいなや、神威の口内に熱を帯びた高杉の舌が無遠慮に侵入し神威の舌を捉える。その瞬間神威はびくりと反応し、一瞬神威の力が緩んだ隙に高杉は握られている手を振りほどき神威が逃れられぬよう頭を掴み口内を犯し続ける。中々終わることのない口づけに、神威は眉を寄せ苦しそうな表情を浮かべるも、甘い吐息を漏らしながら懸命に高杉の行為に応えようとこちらからも舌を絡める。互いの舌が絡まるたびに広がる、自分たちにしか解らない独特の味。

神威の口内を余すことなく犯すと、銀色の糸を引きながらゆっくりと唇を離し桃色の髪を撫でる。ようやく終わった口付けに神威は息を荒げ口元を拭いながら高杉を見やる。神威の口に広がるのは、煙管から伝わった曖昧な香りではなく、はっきりとした『晋助の味』。

「っ、……キセルっていうのじゃ、晋助は堪能できないヨ」

「でも俺の味なんだろ?」

「晋助の味だけど、堪能はできない」

「はっ、贅沢な野郎だなァ…」

「そんな風にしたのは晋助だヨ」

呼吸が整うと、片目を覆っていた包帯を解き始め、元に戻った視界に慣れるまでパチパチと瞬きをする。いつもの慣れた視界に戻ると高杉の隣で横になり布団に潜り込み相手を見上げる。

「晋助、俺たちってお互いのことほとんど何にも知らないのに、どうしてキスしたりセックスしたりしてるんだろう?」

「知らなくたってキスもセックスもできるからだろう?」

「そんなもんなの?」

「互いの気持ちに気づいてたら、そんなもんだろ」

「そんなもんかナ?」

「そんなもんだ」


神威は「ふーん」と呟き、高杉の鎖骨を指先でなぞって遊ぶ。


「元より俺たちは、理屈でどうこう動くタチじゃねーだろ。やりてェからやる、それだけだ」

「そう言われればそうだネ。…じゃあ俺と晋助はセフレってやつ?」

「さぁな。テメェが俺になっていろいろわかったんなら、俺の気持ちぐらいわかんだろ?」

「それくらいは…晋助ごっこなんかしなくたってわかるヨ」

「じゃあ何だったんだ?あのごっこ遊びは」

「それは…」

言葉を続けようとするも白い肌が赤くなっていくのが自分でもわかり、それを隠すように布団の中に潜り込み、相手の胸板に額を押し付ける。その姿があまりに子供っぽく可愛らしいので、高杉は続きを問いただすことはせずに、胸から伝わる熱を感じながらしばらく布団から出てきそうにない神威の頭を撫で続けた。







―それは、好きな人のことをもっと知りたくなったから。



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記念すべき高威処女作。
まだまだあっさりポン酢味なので徐々にねっとりゴマダレ味にしようと思います。

お粗末さまでした。

2011.11.04
姫様


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