書斎 〜参〜

□エスカペイドE
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「お前は厚着をしていたから、向こうは、余計な出血を抑えられていたから致命傷に至らなかったんだ。運が良かったな…」

「そうですか」

「しかしだな…不幸なことに」


先輩は更に言った。


「“リーマス・ルーピン”という人間を入院させることはできなかった。ここにお前の存在は無い」

「……?」

「さぁ、見てみろ。どういうことになってしまったのか」


突き出されたのは1枚の新聞。

その一面を飾る記事に、ボクの目は吸い寄せられた。


「…『社長令嬢殺害未遂』だって…!?犯人を全力で捜査中…逃走……」


その文章の中に、ボクの名はない。


「これ、どういう事でしょうか」

「つまりルーピン、お前が犯人扱いされているんじゃないか?怪我人が行方不明になってるんじゃなく、犯人が消えたと言いたいんだろう」

「………」

「『貴様が何処へ行こうと必ず捜し出し、娘の仇を取ってやる。今後一切、平穏などないぞ』、と脅しを掛けてるつもりなんだ、あのオッサンは」


その声が耳元に聞こえた気がして、身体をブルリと震わせる。
 
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