書斎 〜参〜
□エスカペイドH
1ページ/10ページ
見つめ合った両者は、互いに一歩も引かなかった。
持ち手を握り締める手には力が籠もり、ぶつかる視線は熱が籠もる。
校庭の真ん中。
真剣な表情。
まずは、ジェームズが口を開く。
「シリウス、後悔してないかい?」
「ああ。むしろ気力が沸々と湧いてくるな」
「そう、それは良かった」
「てめえも男だ、負けても吠え面かくなよ?」
「君こそね」
2人はニヤリと笑った。
シリウスの手にあったある物が、空へと舞い上がる。
「いざ!」
「尋常に!」
「「勝負!!」」
舞い上がったシャトルは、しっかりラケットに捉えられた。
シリウスのラケットが唸りをあげて、ジェームズ側へシャトルを飛ばす。
するとジェームズの目がキラリと光り、正確無比なラケットさばきでシャトルは返される。
「やるなぁ、ジェームズ!」
「シリウスこそね、なかなか苦戦させてくれるじゃないか」
「何を。まだまだ余裕、だろう?」
「もちろん。これくらいで僕に勝てるなんて、思ってないだろ?」
うっすら額に光る汗。
鋭い風切り音。
観客の首は交互に打ち返されるシャトルを追い、左右にゆったりと動いていた。