秘要書斎
□Please be...
6ページ/8ページ
「全てを叶えて死ねる人間なんて居ないと思わないか?だからさ、幾らでも我が儘になればいいよ」
「……私の我が儘は無茶ですよ…?」
「じゃあ尚更、聞かせて欲しいな」
どうしてこんなにも、彼は優しいのだろうか。
だから甘えたくなるのだ。
甘えて、困らせて、愛されたくなる。
彼は知っていたのだろうか。
そんな生温い、甘えの形を。
だとしたら、だとしても――
私は、いよいよ力を失ってきた身体を奮い立たせ、唇を動かした。
「一つ……お願いがあります…」
「うん、何?」
「いつか…再び会えたなら…、私の……最愛の人に…なって下さい…二度と、理不尽な別れに…泣くことのない……共に生きていける人生を…下さい……」
「いいよ」
軽い返事だった。
けれどもそれは、強い決意を秘めている。
「やっと、言ったな。いつもいつも他人の為の願いしか口にしてこなかったから…正直、それだけは恨んでたよ。
俺は、そんなに信用に値しないのかって」
「そういう、つもりでは……」
「真意はどうであれ、歯痒かったのは事実だ。今になって、ようやく支えになってやれるんだな」
「…貴方との約束なら…きっと叶いますね…」
「叶えるよ。だって、初めて自分のために我が儘言ってくれたんじゃないか……意地でも叶えてやるしかないだろう…!」
「ふふ、楽しみに…してます」