秘要書斎
□Please be...
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叶わない願など、無い。
「……ム、…ミルザム」
病床の枕元で、誰かが私の名を呼んでいる。
とても暖かくて、懐かしい声のような気がした。
「…どなたですか…?」
「俺だよ、俺。まさか、数十年の間に忘れたのか?」
「ふふ…馬鹿なこと言わないで下さい。私が貴方の声を忘れていると…本気で思っています?会いたかったですよ……ジョン」
「おぉー、良く出来ました」
名を呼ぶと、期待通りといった、それでいて嬉しそうな声色になる。
きっと表情も相応のものなのだろうが、疲れて目を開けられない私にそれを確認する術はない。
「申し訳ありませんね…こんな姿で」
「まぁな、びっくりしたかも。まさか、お前に取り憑ける病気が存在してるとは思ってなかったし」
「何を言ってるんですか…。私だって人間なのですから…病気の一つくらいしますよ」
「そうだっけ?」
ジョンはケラケラ朗らかな笑い声を上げた。
そして、私の瞼に手を添える。
促されるまま、重い瞼をゆっくり持ち上げた。