秘要書斎
□シオンの丘
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滞在5日目。
廊下でばったりミルザムと出会ったリーマスは、またも表情が硬くなるのを感じた。
そんな彼に、何でもないように話しかける。
「不便はありませんか?」
「え、あの…はい、大丈夫です」
「そうですか、それは良かった」
「……………」
「おっと、すみません、足止めさせてしまい――」
「あ、あの!」
急に掛けられた声に、ミルザムの目が丸くなった。
咄嗟に出た自分の声に面食らったのか、リーマスも口を押さえて赤面する。
ひとまず鼓動を落ち着かせ、彼はしっかりミルザムを見つめた。
「たびたび失礼な態度をとってしまって、本当にすみません…!けして不愉快にさせたいわけじゃなくて…」
「いいえ、私の方こそ、突然『ここ』へ招かれれば貴方がつらい思いをすると分かっていたのですが」
そしてミルザムは、いつものように笑みを浮かべる。
しかし、それは普段と異なり、泣き出す寸前の虚勢のように見えるものだった。
「…リーマス、少し付き合ってくれませんか?」
「何に、でしょう?」
「貴方を書斎へ招待したいのです」
「書斎に?」
「えぇ。貴方をここへお招きした理由を、お話しせねばならないと思って」