秘要書斎

□シオンの丘
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「無いとでも?」

「あ?」

「まさか、ブラック家の跡取り息子が学校を逃走した上いつまでも音沙汰なしなんて状況になって、何の恨みも無いとでも?」

「い、いや…その…」

「まったく私の息子はいつからこんなお馬鹿さんになったんでしょう?」

「ごめん、悪かった…」

「ごめんの一言で済む問題ではありません。今さら屋敷に戻れなんて言いませんがね、反省くらいはして頂きたい」

「本当に、申し訳アリマセンデシタ……」

「ねぇ、リーマス」



突如話を振られたリーマスは、びくりと身体を強ばらせた。



「まだ間に合いますよ、本当にこんな相手で良いんですか?」

「……えーっと、恐らく」

「疑問形!?」

「無理はしなくて構いません、嫌な部分はきっぱり指摘してやって、最悪見離してやって下さい」

「……それでも、ボクにとって一番頼れるのはシリウスですから」

「リーマス……」



シリウスが嬉しそうにリーマスの手を握る。

そして父親の顔を迷惑そうに見た。



「馬鹿親父、あんましリーマスを困らせんな」

「すみません、つい」

「もう部屋行っていい?リーマスを案内したいし」

「えぇ、どうぞ」

「よし。行こうぜ、リーマス」

「う、うん」



困惑するリーマスを促し、シリウスは二階へ続く階段を上る。

微笑んで見送るミルザムの肩に、ラクサスの手がそっと置かれた。




「…ミルザム、」

「分かっていますよ。こんな事で、ジョンを我が家へ招けなかった罪滅ぼしになるとは思っていません」

「……………」

「えぇ勿論、彼とジョンを同一視しているわけでもありませんよ。どちらかと言えば母親似のようですし」

「分かっているなら、いい」

「でも構わないでしょう?一目でいいから、あの少年が見たかったんです」

「…うん」



ラクサスがようやく笑顔を見せた。



「おれも、彼に会ってみたかったんだ」

 
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