秘要書斎
□待ち人
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着いた途端に駆け出していったシリウスを、ルシウスが呆れた顔で見ている。
「いいんですか?ミルザム小父さん」
「えぇ、最初はこんなものだと思いますから」
「………」
「ルシウスは優秀で助かります」
「おだてないで下さい!」
真っ赤になった彼に笑いかけ、続いてラクサスに声を掛けた。
「それではいきますか」
「あぁ」
「ルシウス、誰もこの辺りを出入りしないよう宜しくお願いします」
「分かりました」
ラクサスが腰に剣を帯びたのを確認し、私たちは足を踏み出した。
己の左手を眺め、そっと握り締める。
武器を身につけないことも選べる彼が妬ましかった。
『選ぶ』という責任を負う、そのつらさを知っていても。