秘要書斎
□産声 ―Voice―
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「そうですねぇ、私は何も考えずに仕事をこなしてきましたよ」
「ふぅん」
「なぜなら、正しいかどうかを決めるのは、私たちではありません」
「世間の人、だろ?」
「当たりです。そして、今のところ世間は黒の一族を容認しています。分かりますか?」
疑いなど持たなくていい。
その思いを込めて問い掛ける。
しかしシリウスは、納得した顔ではなかった。
「そりゃそうだ、あいつらは恐がって訴えてくりゃいいんだから」
「誰しもが、シリウスのように強いわけではありませんって」
「…強くなんかねぇよ。
あのな、俺が思うのはひどくないかってことなんだ。
ほとんど血が残ってない奴までことごとく殺す必要ってあんの?」
「言うまでもありません」
「あれだろ?『もし人狼の末裔同士が子を成したら、また血が濃くなる』。
でも、実際そんなことなんて起こるはずないだろ?もう10年くらい前からグンと減ってるんだから」
「おやおや…」
あまりに楽観的な意見に、私は苦笑を漏らす。
「あなたにも、私の最後の狩りを見せてあげるべきでしたね」
「6年前の?」
「そう、あなたがつまらないと遊びに行ってしまったあの時の」