書斎 〜参〜
□エスカペイドH
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その頃、調理室へ招かれたジェームズは、声にならない呻き声を上げていた。
「―――っ!―――!!!―――っっっ!!?」
「無理して異国の言葉なんか喋らなくていいよ?」
「――っ違うよ!もはや辛いとかそういうレベルを越えた刺激に、舌を動かす能力を奪われたんだよ!」
勝利の象徴だったはずのソレを指差し、彼は尋ねる。
「これは、何!!?」
「シュークリーム」
「あ、そっか。悪い、予算の都合でプチシューしか用意できなかった」
「むしろプチシューで良かったくらいだ!僕が聞きたいのは、その上に乗っている緑の物体は何かってこと!」
「日本名物“WASABI”」
「寿司とかに入ってる薬味だな、好きだろ?」
あっけらかんとした級友の台詞に、ジェームズの額に青筋が浮かぶ。
「バカヤロー!!あれは少量でピリッと辛いからいいんだよ!生クリームよろしく乗せるな、限度ってもんを考えろぉぉぉ!!!」
「仕方ない。じゃあ次の奴いくか」
「誰?」
「頑張ったリチャードとソニアを労いに」
新たに2つ用意されたシュークリームに、今度は黄色い何かが盛り付けられる。
ジェームズも、興味を引かれて尋ねてみた。
「今度は?」
「“KARASHI” 東洋のマスタードだ。死ぬほど辛い」
<To Be Continued>