書斎 〜参〜
□エスカペイドH
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『いい勝負だなぁ』
『実力が拮抗しているので見応えがありますね。
さて、現在は両者共に10点です。15点先取で勝ちとなりますので、あと5点で勝利を掴むことが出来ます』
と、そこへ別のクラスメイトが耳打ちをしてきた。
うんうんと頷き、リチャードが付け加える。
『たった今、休み時間が残り10分を切ったと連絡がありました。そこで急ですが、次に点数を入れた方が勝ちとしたいと思います』
「マジでか!?」
「じゃあさっさとシリウスを負かさないと!」
「いやいや、勝つのは俺だから」
「寝言は寝てから言え」
ますますシャトルの往復が激しくなってきた。
実況解説のリチャードとソニアすら、声もなく試合の行く末を見つめている。
シリウスがハイクリアを打ったかと思えば、ジェームズはドロップショットで応じる。
それをヘアピンで返せば、予想していたと言わんばかりに危なげなく打ち返された。
「どっちが勝つかしらね」
「シリウスじゃない?体力あるもの」
彼女らの言葉通り、ジェームズの顔には疲労が見えかけていた。
誰もがシリウスの勝利を確信した、その時――
「お、すげー高級車」
近くの道路を、いかにも偉そうな人が乗っている高級車が通り過ぎていく。
シリウスはそれに気を取られてしまったのだ。
「「あ」」
ジェームズ自身も予想していなかったことに、それが勝負を決する一撃となった。