書斎 〜参〜
□エスカペイドE
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しばらく入院していて、幾つか気になることが浮かんできた。
「先輩、大学はどうなっているんですか?」
「うん、ひとまず休学届けは出してある。何と言っても、恋人がキャンパス内で刺されたんだ。ひどくショックを受けているはずだし…復学も難しいだろうな」
「……ですよね」
覚悟はしていたけど、やっぱり嫌な気持ちは抑えられない。
小さく唇を噛みしめたが、次の言葉にぱっと顔を上げた。
「なぁ、ルーピン。もう一度入試受けるか?」
「はい?」
「今年はもう無理だが、来年どこか別の大学に入り直せば教師への道は諦めずに済むぞ?」
体力と気力があればの話だがな、と付け加えられていたが、そんな物はボクの耳に入っていなかった。
心が希望で明るくなる。
「受けます。教師になる夢は諦められませんから」
「そう、その意気だ」
どこかホッとした表情で彼は言った。
「ところで……」
「どうした?」
「あの、たまにチラチラ扉の陰から覗いている怪しい人はどなたか、先輩ご存じですか?」
「もしや、白衣を着たオレと似たような金髪で眼鏡の優男か」
はい、と頷くと、先輩はおかしそうに笑い声を漏らす。