書斎 〜参〜
□エスカペイドE
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そして、思い当たる。
「じゃあ、ここは?」
問いかけると、ルシウス先輩は意地悪い満面の笑みになった。
「心配要らない。ここはオレの実家なんだ。皆が皆お前の味方をしてくれる、安心して静養しろ」
「そんな、大丈夫なんですか!?」
「大丈夫かどうか、ではないな。オレがそうしたいからするんだ。黙って甘えとけ」
先輩の瞳が剣呑な光を帯びる。
ボクは素直に頷くしかなかった。
痛みがひどくなる前に、ルシウス先輩が部屋を後にする。
1人になった病室で染み一つ無い天井を見ていると、不意にそこに紅い飛沫が迸った。
「!!!?」
驚いて目を見開くと即座に消える。
何のことはない、ただの幻だ。
(眠れるだろうか……)
靄がかかったような脳内を掻き回す、記憶の渦。
それを整理するために脳裏に蘇らせるのは、ひどく体力を消耗するだろう。
今はただ、夢も見ない、深い休息が欲しかった。