秘要書斎
□Be my dear?
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今ジョンの真ん前に立っているのは、5年間片時も忘れたことのない顔だった。
気性に反して真っすぐな黒髪と、おどけをちらつかせるダークグレイの瞳。
そして………
「ジ、ジョン!これは一体何の真似ですか!?」
「あ?……ああ、つい条件反射で?」
彼は考えるよりも先に、全力を込めたアッパーを繰り出していた。
間違いない。
ミルザム・ブラックだ。
「ずいぶん手荒い歓迎ですね、害意でもあったのかと疑うくらいに」
「心配しなくてもあるよ」
へー、そうですか、と聞いているのかいないのか分からないような返答。
ジョンの眉間に寄った皺も気に留めず、ミルザムはさっさと家のなかに押し掛けた。
「お邪魔します」
「邪魔するなら出ていけ」
「嫌ですね、ただの社交辞令ですってば」
「お前が言うと事実になりそうなんだ!」
「……迷惑ですか?」
「………はっ?」
「そうではないでしょう?本当に嫌なら、あなたは私を追い出すことができますものね。
どうして、そうしないんです?」
その問いに答える術を、ジョンは持っていなかった。
諦めたように口を閉ざした彼にミルザムは再度言う。
「お邪魔します」
「おう」