秘要書斎
□シオンの丘
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「お帰りなさい、シリウス」
「…ただいま」
「あぁ、よく戻った」
ラクサスにわしわしと頭を撫でられ、シリウスは居心地悪そうに身をすくめた。
すっかり逞しくなった息子を、ミルザムは感慨深げに眺める。
「男子は三日で見違えると言いますが、偽りではなかったようですね」
「どうも。親父は全然変わってねぇな」
「そりゃ、アンチエイジングには気を使っていますから」
「どこの乙女だっ!?」
久しぶりのスキンシップに興じるシリウスの隣で、リーマスが身じろぐ。
気付いたシリウスが、彼の腕をしっかりと握った。
ミルザムは改めてリーマスへ向き直り、膝をつく。
「初めまして、リーマス・ジョン・ルーピン。そしてようこそ、我々の屋敷へ」
「……どうも…」
「私は貴方の来訪を歓迎します。窮屈な場ではありますが、どうか気負わず寛いで下さい」
「俺がずっと傍にいるから心配ないしな」
シリウスの笑顔に、リーマスの表情も綻ぶ。
それを見てホッとしたミルザムは立ち上がり、階段を指し示した。
「2人ともシリウスの自室で眠れるように用意してありますから、荷物を運ばせましょう」
「いいって、自分で持ってくよ。つーかベッドどうしてあんの?」
「ツインにしていますが」
「……ダブルの方が良かったのか?」
「な、違っ!?」
「すぐに手配させよう」
「今なら、天蓋付きの物が手頃な値段になっているはずです」
「要らねぇっ!!何だよ2人がかりで!!俺に恨みでもあんのか!?」
地雷だ。
リーマスが、細く溜め息を吐いた。
ミルザムが、傍目には満面と形容できるような笑みを浮かべる。