惑いし心の導となれ

□第零夜
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草木も眠る丑の刻。


魑魅魍魎が跋扈するこの時間にわざわざ出歩く者はいない。


いるのは人外の異形だけ





「ハァッ!」

「オンアビラウンキャンシャラクタン!」





─────ではなかった













「フゥ…………」



妖がいなくなったことを確認して息をついた若い青年
彼の名は安倍晴明。

あの、大陰陽師の晴明である。

(といってもまだこのころは陰陽生なのだが)

そして彼の傍らに徒人には見えぬ人外の存在が一人。

「…………晴明」

「ん?なんだ、紅蓮」


赤毛の青年──十二神将がひとりの火将騰蛇…晴明に与えられた二つ名を紅蓮という──は少々苛立ちながら自分の主に問う。


「……帰らないのか」

「まだ、だな。」



ほけほけと笑いながら答える晴明に紅蓮は無言でなぜだと訴える。



「少々確かめたい事があってな」

「確かめたい事……?」

それだったらついていくのが俺じゃなくてもいいだろうと目で訴えてくる紅蓮を無視して晴明は歩を進めている。





(紅蓮がいないと意味がないだろうしな…………)


そして今朝出た占いの結果を思い返した。





(〔龍に守護されし星姫、恐れを抱く神の導の光となる〕か……)


〔恐れを抱く神〕

これは紅蓮のことなのではないだろうか。

ちらりと紅蓮の額にはめられた金冠を見つつ考える。




(あの一件から紅蓮は恐れている……ならばあれは紅蓮を支える者が現れるということではないか………?)


「……晴明、確かめたい事とはいったい────」


しびれをきらした紅蓮が晴明を問い詰めようとしたそのとき。










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