15万打リクエスト

□情意サミット
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「臨也は、リンチに合ったんだよ。路地裏でね。」

初めて聞いた事実に、静雄は凍りついた。
言葉を失っている静雄を見て、新羅は苦笑を溢しながらベッドに寝かせている臨也を見た。

「静雄には言うなって言われてたから言ってなかったんだけど…言わんこっちゃないっていうか」

ざまぁみろ。
――そんな非道なことを思うだろう。そう思っていた。
なのに今、そんなことを思う余裕もないくらいに動揺している自分がいた。
臨也がリンチ。しかも、あんなに取り乱すほどに、酷かった。あの傷痕も、それによるものなのだろう。
そんな受け入れがたいような事実に、動揺している。

「だから、路地裏がトラウマになってるんだよ。ありがとうね、臨也を運んできてくれて。」

「…いや、構わねぇ……」

そう返しながら、ベッドで寝ている臨也へ目を向けた。
――喧嘩相手に、何をこんなに心配しているのだろう。
大嫌いな奴だ。いつも鬱陶しくて、苛立って、それ以上は何もないはずの奴。
…なのに、どうしてこんなにも胸がざわつくのだろう。

「…で、臨也をリンチした奴等ってもう捕まってるのか…?」

「あぁ。何でも、仕事内容が粟楠関係だったらしくて、まぁ今頃鰻の餌にでもなってるのかもね」

ケラケラと笑って言ってのける新羅を、静雄は訝しげな目で見やった。
臨也に傷を負わせた犯人が抹消されているだけましか、と安堵し、逆にその安堵に動揺していると。

「ん…」

小さな声が聞こえ振り返れば、目を開けてきょろきょろと視線を彷徨わせている臨也の姿があった。
その目が新羅と静雄を捉え、現在地を把握して小さく息を吐いた。

「大丈夫かい?臨也」

「何ともない」

臨也に歩み寄る新羅を目で追い、上半身を起こした臨也を見て胸が痛くなった。
臨也が心配で、気になる。素直に歩み寄れたらどんなに良かっただろう。
…でも、どうしてこんなに心配しているのかが分からない。自業自得、と罵ることすら憚られる。どうして。

「ごめん、新羅。もう帰るよ」

「もう少し休んでても良いんだよ?見たところ少し痩せたんじゃない?」

「…ダイエットしてるの。じゃあ、帰るから」

そんな冗談混じりな嘘にすら胸が締め付けられた。ただ、悟られないように強がっていることだけは一目瞭然で。
臨也を見ることも出来ず俯く静雄を見た新羅は、無駄に朗らかな声で唐突に言った。

「臨也、静雄に送ってもらいなよ」

「…は?」

「やっぱり友人として心配だからさぁ。ほら、静雄!臨也行っちゃうよ!」

訳が分からず慌てる静雄を尻目に見た臨也は、ふざけるな、とひとつ溢す。
…しかしその顔は、普段の忌々しげな色は含まれておらず、静雄は新羅に押されるがままに臨也について行くことになった。



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