15万打リクエスト

□情意サミット
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「いざやあああ!」

「シズちゃんったら、本当に相変わらずだねぇ」

池袋で大人げない喧嘩を繰り広げるのは、折原臨也と平和島静雄の二人だ。
犬猿の仲、という一言では片付けられないほど険悪な二人は、高校生の頃からこんな状態である。
静雄としても、挑発して来たりいちいち一言多かったり、とにかく調子を崩される臨也には困らされているのだ。こいつが居なければ、もっとまともな高校生活を送れただろうに。
勿論、今更そんなことを言ってもどうしようもないのだけれど。
そんな臨也の匂いを嗅ぎ付けて、今日も追い詰め、出来るならば殺そうと勇んでいるわけだ。


「上司の人待ってるんじゃない?早く戻ってあげなよ!」

うるせぇ、と怒鳴り、カラカラと笑う臨也の背を射抜かんばかりに睨み付ける。
裂けていく人混みを突き進み、静雄を撒こうと路地裏へ入った臨也を追い、曲がった。

臨也は立ち止まっていた。何をしているんだ、と思いながらも、感情の昂りに任せて持っていた自転車を振り上げる。

…振り返った臨也の顔は、酷く引きつっていた。何かに恐れているかのような、焦燥した表情。
動揺してしまい、思わず降り下ろしかけた腕を無理矢理に止めた。変に力をかけたため、自転車はぐにゃりと歪む。

ぺた、とへたりこんだ臨也の様子は、見るからにいつもと違う。
不安になり、その顔を窺おうと肩に手をかければ。

「止めろ…ッ」

――聞いたこともない悲痛な声が、その唇から紡がれた。
状況が把握出来ず、おい手前、と声をかけるも、臨也の怯えは収まるどころか酷くなり静雄から逃れようと声を荒げてもがきだす。
そんな状態の人間を放っておけるはずもなく、静雄は正面から臨也の肩を掴んだ。

「おい、臨也…」

「止めろ、離せっ、やだ!いや!」

じたばたと暴れる臨也は、明らかにいつもの彼とは欠け離れていた。
静雄に恐怖しているというよりは、もっと遠くの何かに怯えているような――

その時、臨也の暴れた足が静雄の脛を蹴った。
鈍い痛みに足がふらつき顔をしかめれば、臨也は更に顔を蒼白にさせて後退った。
肩を掴んだままの静雄はそのままバランスを崩し。
体勢を立て直そうとした時には遅く、そのまま臨也までも押し倒してしまった。
どん、と地面に叩きつけられた臨也の背が鳴り、その顔が顰められる。
覆い被さった状態にわけもわからず動揺して、謝って退こうとした時だった。


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