15万打リクエスト

□愛してるのは。
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朝、目が覚めた。
いつものようにベッドから出てカーテンを開けて、それから洗面台へゆっくりと歩いていく。

今日はシズちゃんと会う約束がある。仕事が終わってからシズちゃんの家に行けば良いんだっけ。
…シズちゃんの仕事は休みだから、ご飯を作って貰おうかな。
そういえば今日の取引――

そんなことを頭に巡らせながら、臨也はふと気がつく。
…何だか、今日は身体が重い。気分的な重さではなく、純粋に身体が重たい。
例えるなら、肩に重しを載せているような――。

そんなことを思いながら洗面台に着き、洗顔後ふと鏡に目を向けて、

臨也は文字通り凍りついた。



***

ピンポンピンポンピンポン

「ん゛ー……」

ピンポンピンポンピンポンピンポン

「っ、うるせぇ!」

朝8時過ぎ。
たまの休日はゆっくり寝よう、そう決めていたのに、静雄は朝早くからの来客にたった今叩き起こされた。
着替えることも億劫で、ジャージのまま不機嫌を露呈させながら玄関へ歩き扉を開ける。
そこには、今日の夜に会う約束をしていたはずの黒い姿が立っていた。

「手前…約束は夜だっただろ?」

「シズちゃん、見て」

そう言った臨也は、閉めきっていたジャケットを開け始める。
何なんだ、と思い――ふと、その声が妙に可愛らしいものであることに気がつく。…そう、まるで女の声のように。
ジャケットを開けた臨也は、静雄を困ったように見上げた。


「…女になっちゃったんだけど、どうしよう」


「…は?」

思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
確かに、胸元に目を向ければなだらかな丘が出来上がっており、普段よりも身体の節々が丸みを帯びている気がする。
しかし勿論、それだけでそんな現実には有り得ないようなことを信じられるはずがない。

「…俺を騙して遊びたいのか?」

「違うし。俺だって嘘吐くならもっとましな嘘吐いてるよ」

そう言った臨也の顔は心底参った色をしており、嘘を吐いているようには到底見えない。
半信半疑のまま、本当なのか、と問い掛ければ、臨也は顔を顰めながら、それなら触ってみる?と低く言う。
恋人同士という関係上臨也に触れたことはあるが今の状態で触れるのは憚られて、静雄は返事を返さないまま臨也を家に入れてやった。



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