15万打リクエスト

□ケーキよりも甘く
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土曜日。
臨也は私服で静雄の家に向かっていた。
静雄の両親や弟のことはすっかり考えていなかった。会ったとしても友人でやり過ごせるけれど。

遊ぶ場所など何処でも良かった。
静雄と一緒に居られるなら、面倒臭い場所ではない限り、何処でも良かったのだ。
だから、二人きりでいられるであろう静雄の家を選んだ。…自分の家では二人の妹が騒がしいことだけは間違いない。

ぼんやりと考えていれば、静雄と待ち合わせしている場所に着いた。
静雄の家に行くのは初めてで、道が分からないと言えば近場まで迎えに来てくれると言ってくれた。
約束の時間5分前。まだ来ていないだろうと見回せば。

「臨也、早かったな」

先に気づいていた静雄が、此方まで歩いて来た。
普段見慣れない私服。制服もいいと思うけれど。

「ううん、別に」

「…会話が噛み合ってねぇけど」

かっこいい。もし彼が怪力なんていう超人的な能力を持ち合わせていなかったら、引く手数多だっただろう。静雄がかっこいいという女子の話も、聞いたことが無かったわけでもない。
でも、そのシズちゃんは俺のものだ。
そんな優越に浸りながら、歩き出した静雄に走って追い付いた。
歩幅を合わせてくれる静雄の隣で歩きながら、臨也は問い掛ける。

「シズちゃん来るの早かったね」

「手前と変わらないけどな。臨也が着く少し前に着いただけだ」

そんなちょっとしたことに嬉しくなって、臨也は真顔にしても勝手に緩む頬を気にしながら歩く。
…何だか、恋人、って感じだ。

「ケーキ屋寄ってくか?後で家で食えばいいだろ」

「シズちゃんケーキ好きだしね」

「…悪いか」

「ううん、シズちゃんらしい」

ケーキ屋に入れば、静雄は顔馴染みなのか店員の一人が静雄へ笑顔で会釈をした。同じように静雄も返す。
自分の知らない彼を発見していくような気がして、嬉しくなった。
初デートというだけで浮かれている。それは自分でもよく分かる。遠足に行く幼稚園児みたいな気分だ。勿論、高校生らしからぬほどにワクワクしていることも静雄には言えないけれど。

「臨也は何れにするんだ?」

「何、シズちゃん奢ってくれるの?」

「…500円までならな」

そう言って臨也をじろりと見た静雄が面白くて、臨也は再び笑みを零した。



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