15万打リクエスト

□甘色結び
1ページ/5ページ


「やぁ、帝人くん。学校帰りかい?」

「あ、臨也さん、こんにちは。」

イライラ。


『本当に、お前とは絡みたくない』

「何?褒めてるのかい?」

イライライライラ。


「だからさ、本当に面倒臭かったんだよ。ドタチン居てくれたら良かったのに」

「無理に決まってるだろ。まぁでも、暇だったら呼べば来てやるから」

「本当?ドタチンがいてくれると助かるよ、やっぱりドタチン好き!」

「何言ってんだよ」

イライライライライライラ。
ぷっつん。


「臨也!!」

「え?何、シズちゃん」

臨也の本当に何も分かっていない声に、怒りを露にする静雄は半ば呆れすら抱いていた。
でも、呆れなんていう感情が怒りに勝るはずもなく、静雄は臨也に怒鳴りかかる。


「手前、誰とでも喋りやがって!」


「…は?」

息を荒くしながら、静雄は臨也を睨み付けた。


静雄と臨也は付き合っている。
勿論、恋人同士という意味だ。
喧嘩と愛情は別物。そんな空気すら漂わせる二人の仲は、池袋でも密やかに囁かれている。
尤も、二人が恋人らしくしている場面を見なければ、誰一人として信じないのだけれど。

そして静雄は、臨也が自分以外の他人と話すのが許せない。
何処の独占欲剥き出しな彼氏だ、とは思うが、嘘じゃないのだから仕方がない。
好きだから、自分以外の誰かと親しいのを見たくない。
もし自分以外の誰かに惚れてしまったら怖い。
そんな子供みたいな我が侭と不安。


「当たり前だよ、なんで?」

「何でもだ!手前が俺以外の奴と絡むのが気に食わないんだよ!」

勢いのままに怒鳴れば、臨也は眉根を寄せる。
納得いかない、と言いたげな顔に、静雄は押し黙った。
分かってはいるのだ。

「なにそれ、やきもち?
でも、俺は情報屋なんだよ?誰とも話さないなんて、無理に決まってるだろ」

分かっている。自分の我が侭にすぎないことくらい。
臨也という存在を顧みない、自己主義な気持ちだということも。

黙り込んで俯いた静雄。
臨也は小さく溜め息を吐いて、それから照れながら苦笑した。

「まぁ、シズちゃんの気持ちも分からなくないけど…。
俺はシズちゃんのものだけど、シズちゃんだけのものじゃないからさ」

一理ある。頷いて見せれば、臨也は、ね、と同意の声を溢した。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ