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□GOOD DAY
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その数時間後。
臨也は静雄の家の前で踞っていた。
シズちゃんなんかだいっきらい。
数時間前とは全く真逆な、そんなことを思いながら。


数時間前。
臨也は、池袋で静雄を見つけた。
素直に駆け寄れるはずもなく、馬鹿にしてやろうと思ったのだけれど。

勿論、静雄は仕事中。
隣には、彼の上司と後輩の姿がある。
勿論臨也だって、あの3人が仲が良いのは知っている。付き合う前から、よく見かけていたのだから。

我慢。我慢だ。
大丈夫、俺は恋人なんだよ?シズちゃんにとって、一番なはず。
…はず。

言い聞かせながらも、足は動かなくて。
楽しそうに話す姿は、来良学園に通うあの3人さながら。
分かってる。あれは、仲が良いだけ。
恋愛感情とか、そんなのじゃない。…ない。

考えれば考えるほど、思考はマイナスへ傾いていってしまう。
シズちゃんを信じたいのに、心の何処かで疑ってしまう。
…もしどちらかが、臨也と同じ恋仲だったら?
そんな不安が、胸を苦しくするのだ。

やだ。やだやだ。
シズちゃんは、俺の恋人なの。
あの後輩のでもなければ、上司のでもない。
俺の、俺だけの。

馬鹿みたい。
分かっているのに、堪えきれなくなってその場を離れた。


…そして今、静雄の家の玄関にいる。
こんなところに来て、何をすると言うわけでもないけれど。
会いたい。
この不安を払拭して欲しい。
そんな思いを抱いたまま、もう30分が経とうとしていた。

遅いなぁ。
もしかしたら、3人でご飯でも食べに行ってるとか?
…仕方ないよね、仕事の付き合いだから。
仕方ない。けど。


「臨也?」

唐突に声が聞こえた。
待って、待って、もうこんなに待った人。

「シズちゃん…!」

「手前、来るなら電話しろよ、直ぐに来てやったのに…
ほら、上がれ。コーヒーくらいは出してやれる」

そう言って、静雄は臨也を家に押し込む。
不器用だけど優しい。この優しさは、嘘なんかじゃない。
でも、皆に優しいから。俺だけじゃないから。

ぎゅう、と静雄に抱きついた。
不思議そうな顔で臨也を見た静雄へ、臨也は呟く。

「シズちゃんは、俺のだよね?」

「…あ?」

「シズちゃんの恋人は、俺だけだよね?」

そう言って上げられた顔は、泣きそうに歪められていて。
静雄は、その細い身体を抱き締め返した。
そんなの。

「当たり前だろ。
俺の恋人は、手前だけなんだから」

静雄の言葉に、臨也の顔が綻んだ。
普段の八方美人な態度や近付きがたい雰囲気とは違う、俺しか知らない臨也の表情。
愛しくて愛しくて堪らない、何があっても捨てられない表情。
こんなに溺愛している俺が、臨也以外にそんな奴つくるはずもないのに。



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