15万打リクエスト

□愛し方
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臨也の居なくなった部屋で、静雄は再び煙草を取り出した。
灰皿には数時間で10本近い数の煙草が捨てられているものの、どれも半ばまでしか吸っていない。

『こんなセックス、したくねぇ』

そう言ったときに一瞬垣間見えた臨也の表情が、瞼に焼き付いている。
違う、そんな意味じゃない。そう口に出なかったのは、その先に何を言えば良いかわからなかったから。
奴と違って、口下手な自分。苛立ちはすぐに暴力にすりかわる。
全て、全て、腕力という表現に託してきた。不便ではあったけれど、単純なお陰か悩みはしなかった。
…それに対して痛みを覚えたのは、ほんの3ヶ月前。
臨也が好きだ、と気がついた時だ。


いつもの喧嘩の最中、臨也の逃げ込んだ路地裏。
彼にしては珍しくヘマでもしたのか、その先は行き止まりだった。

「行き止まりだ、臨也」

殺さなくとも、ボコボコにしてやるくらいは問題無いだろう。
久々の優越を味わいながらそう言うも、臨也は至って反抗的な態度を崩さない。

「、…これくらいで、シズちゃんに殺られるとでも思ってるの?」

…しかし、一瞬浮かんだ恐怖の芽生えたような表情。初めて見たに等しい、彼の弱い表情。
身体の中で煮詰まっていた怒気が威力を失っていくのが分かった。
…しかし身体だけは勝手に動き、気がつけば臨也を壁に押し付けていた。
驚き、強張った臨也の表情。
その白い首筋に、歯を突き立てた。
『誰かに奪われたくない』
訳も分からずそう思った。その行為が独占欲からだったと、終わってから気がつく。
そのまま、臨也を無理矢理に犯した。
嫌だ、やめて、とうわ言のように喘ぐ臨也を知りながらも言葉はなにも紡げず、その白い痩身を貪った。


しかし臨也はそれからも池袋に来たり、俺に喧嘩を売ったり。
気がつけば、憎むべき喧嘩相手という項目と、身体を重ねる相手という項目が並んでいた。
そして、恋愛感情を抱いた相手、という項目も。

でも、愛し方がわからない。
ただ、身体を求めて、所有の証として噛み跡を残して。

でも、分かっていた。
強姦紛いに犯したことに、自分が悦びを感じてなんていないことに。
今も、一方的な愛情表現であることに。
…だから、こんなセックスはもう止めよう、と言ったのだ。
結果として、口下手のせいで間違った意味でとられたのだけれど。

素直に『好きだ』と言えば、臨也はどんな反応をする?
それだけで、心から想いが伝わる?
そもそも、そんなことを言えるのだろうか?

気付けば燃えていた煙草の灰が、ぼろ、と崩れ落ちた。


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