15万打リクエスト
□我侭、そんな愛。
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「シズちゃん…!」
と、声がした。
声の方に目を向ければ、そこには臨也が立っていた。
春先とは言ってもまだ寒くはある温度の中、どれ程待たせてしまったのだろう。
駆け寄れば、臨也は泣きそうな顔をしているのに気がついた。
「臨」
「シズちゃん最悪!帰るっ」
名前を呼ぼうとした途端にそう言われ、冒頭に至る。
手を掴めば、臨也は泣きそうな顔で振り返った。
とにもかくにも、謝らなければならない。
「ごめん、臨也」
「っ、知らない、シズちゃんなんか知らないっ」
駄々っ子のような口調に相当切羽詰まっているのが伺えた。
臨也のことだから、時間前には着いていたのだろう。待った時間は40分ばかりではないはずだ。だから、自分も5分早く着くように出たのだ。
「何でも言うこと聞いてやるから、帰るなって、ごめん」
焦燥を隠せないままそう言えば、臨也は僅かに思案したように黙り込み。
再び、歩き出した。
何処に行くのかと戸惑いながら臨也の腕を戻すように引けば、臨也は眉根を寄せて振り返る。
「言うこと聞いてくれるんだろ?シズちゃんの家行くの」
「え、ああ…」
臨也が足早に歩き出すのに合わせて、今走ってきた道を戻った。
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