15万打リクエスト

□Twilight
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「臨也くんよぉ、また性懲りもなく池袋に来やがって…俺の視界に入るなよ、手前」

初っぱなから酷い。
浮かべた笑みが作り物ということなんか、シズちゃんは気づいていない。

「俺だって、シズちゃんと喧嘩しに来てるんじゃ無いんだからさ、何が嬉しくて君と会うんだよ」

「そうか、なら死ね」

「会話になってないよ、シズちゃん。まぁ、単細胞だから仕方ないね」

「っ、手前!!」

既に彼の手によって引き抜かれていた喫茶店の看板が凄い勢いで振り切られる。
勿論スレスレを避けた臨也は、挑発するような笑みを静雄に向けてから、帰宅ラッシュが終わり人通りが何となく落ち着いた街を走り始めた。
後ろからは、酷い剣幕の静雄が追い掛けてくる。

「よく、そんな重いもの持ったまま走れるね、やっぱり人間じゃないんじゃないの?」

「うるせえ!ノミ蟲のくせにちょこまか走り回るな!!」

更に怒らせて、臨也は静雄には効かないナイフを片手に持ちながら、走る、走る。

泣きそう。切ない。辛い。
何が好きで恨まれなければならないのだろう。
笑顔で話しかけられたら、どれ程嬉しいだろう。
…でも、そんなの叶わないから、走る。走る。
ただ、彼が諦めず追いかけてくる時間は、自分と彼、二人だけのものなのだから。


どれ程逃げ回っただろう。
静雄を撒いて、人目を憚るように路地裏へ入った。
壁に凭れて僅かに上がった息を整えていれば、じわり、と眺めた夕暮れの仄紅い空が滲む。
拭うこともしないまま眩しさに俯けば、滴はすぐに頬を滑った。

「…すき」

すき。すき。すき。
シズちゃんが、すき。

路地裏にいる臨也など、表を通行する人々はまるで気にかけない。
勿論、そんな中で呟いた言葉に返事なんか来ない。
言えないから、きっとその方が――


「何が好きなんだよ」


突然、そんな声が耳に入った。
驚きと共に、声のした方に頭を向ければ。

未だに看板を片手に提げたままの静雄がいた。


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