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□Twilight
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日々の喧騒で溢れる池袋。
その喧騒に溶け込む喧嘩騒ぎ。
随分前に騒ぎになったカラーギャングでもなければ、不良やチンピラなどの類いでもない。

「毎日ご苦労様!俺のことがそんなに好きなの?」

「ざっけんな!!俺は、手前が嫌いで嫌いで、仕方ねぇんだよ!!」

折原臨也。平和島静雄。
旧知の仲の二人は、どちらかが互いの街に来る度に、こうして喧嘩とも言い難い戦争のような鬼ごっこを繰り広げる。


『ぐだぐだと意味の分からない言葉を並べ立てて罵ってくる。』
『人間じゃないだとか、化け物だとか言って、鬱陶しいこと他ならない。』
『挙句、奇妙な人類愛。気持ち悪いことこの上ない。』
『とにかく、折原臨也が、大嫌いだ。』

臨也は、静雄から逃げ切って、そのまま駅まで歩を進めていた。
静雄に心から嫌われているのは、百も承知。
なんたって俺も、平和島静雄が世界で一番大嫌いだから。
何を言っても通じない。化け物みたいな怪力。ナイフすらろくに武器にならない。

ただ、彼の「嫌い」と違うとすれば、俺は“人間として”彼が嫌いと言うことだ。

それが意味するものなんか、自分でも分かっている。
人間を愛している。人間じゃない人間は、人間とは認めない。だから、人間として嫌い。
それは、虚ろな博愛としての愛情。

君は知らないだろう。
俺の大嫌いに、どれ程の「愛している」が詰まっているか、なんて。

その感情に気がついたときから、喧嘩を終える度に涙が溢れた。
彼の言葉が、知らぬ間に心に深い傷を作っていたのか。
治りかけても抉られ、また治りかければ抉られ。
会いに行かなければ良い、なんて、人は言うかもしれないけれど、会わない方が苦しくて堪らない。
あんな粗暴な会話の何処に心を奪われたのか、自分でも分からないけれど。

そして今日も一人、溢れる涙を拭う。
彼に見られて馬鹿にされたくない。きっと、もっとみっともなく泣いてしまう。
心配でもされれば、期待してしまう。関係が変わるのが怖い。
だから、彼の忌み嫌った視線に溢れそうになる涙を堪えて、罵倒して、哄笑して、嘲笑して、逃げる。

「あー…馬鹿みたい……」

人通りの少ない時間のホームで一通り泣いて、それから自嘲して、俺の1日は終わる。




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