15万打リクエスト

□薬指に愛を
3ページ/6ページ



4日前。3日前。
徐々にその日が近づいてくる。
2日前。1日前。
ふとした態度で臨也にばれやしないだろうか、と思い会う度に緊張したが。
どうにか、当日。



『ごめん、ちょっと用があるんだ』

電話口で聞いた静雄の声に、臨也は思わず、え、と声を漏らした。

「わ、かった。ごめんね」

『気にすんな。じゃあ、またな』

ぷつん、と通話が切れた。
虚しい音が響く携帯を握りしめて、喉で詰まる息を吐き出せないまま下唇を噛み締める。

5日前のあの時から、シズちゃんの様子がおかしい。
素っ気なかったり、ぼんやりしてたり。
不安で仕方がなくて、今日勇気を出して電話をかければ、会えない、と言われた。

疑いたくなくても、疑ってしまう。
俺から、離れていってるんじゃないか、なんて。
…だって、今日は。

「ばーか…」

強がりにもならない声音でそう呟いて携帯を机に投げ出す。
ソファで膝を抱えてそこに顔を埋めれば、最近不安でよく眠れなかった分の眠気が襲ってきた。



ピンポン

突然のチャイムの音に、臨也は起きた。
誰かと思いつつ立ち上がり扉を開ければ。

「開けるの遅えな」

「シズちゃん――」

静雄が、いた。
どうしているのだろう。用があると言っていたはずなのに。

「どうして、来たの?」

きりきりと痛む胸を堪えて、笑えもしないまま問い掛ける。
すると、静雄は驚いたように眉尻を跳ねさせ、口が固まった。

「それは、…その、あーっと…」

口ごもる静雄の顔はほんのりと赤く染まりだす。
状況が掴めないまま、早く言えよ、と急かそうと口を開いた時。


「おめでとう」


切羽詰まった声が、そう紡いだ。
いつになく、真剣な顔で。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ