15万打リクエスト
□彩色パズル
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「折原臨也は何処かに消えたわよ」
静雄は、女の言葉に耳を疑った。
言葉を咀嚼しきれないまま、静雄は女に問いかける。
「消えた、ってどういうことだよ…?」
「知らないわよ。
何か言ってた気はするけど、あいつの言葉なんか記憶する価値も無いもの」
至って無感情に言った女は、臨也に頼まれたらしい書類を纏めながら静雄をちらりと見て、ひとつ瞬き。
何かを思い出すように視線を揺らし、あ、と声を漏らした。
「ひとつ思い出したわ。
貴方に会いたくないとか何とか言ってたわよ。」
――耳を疑いたくなるような台詞。…でも、心の奥底で巣食っていた台詞。
静雄は、信じられない気持ちのまま、固まった。
静雄と臨也は付き合っている。
とは言っても、知り合ってからの年数と比べれば、まだまだ日は浅い。
…3週間前。
明日会う、という約束を断る電話が来た。
『ごめんね、どうしても断れない用があって』
「いや、気にするなよ」
『…ありがと、シズちゃん』
電話口から響く声は少し沈んでいて、静雄との約束を破ってしまうことに心底落胆していたようだった。
勿論静雄も残念ではあったが、駄々を捏ねるほど子供ではないし、臨也には臨也の事情があるだろう。
だから、“どうしても断れない用”の内容を問い質すことはせず、静雄は電話を切ったのだけれど。
――それ以来、臨也と連絡がとれていない。
臨也が池袋にこれほど現れなかったのは久しぶりだった上に、付き合ってからは池袋に来れない日が続くときは毎回連絡が来ていた。
不審に思って連絡を入れようにも、家は留守電、携帯は電源を切っているらしく繋がらない。
流石に心配になり、静雄は思わず新宿にある臨也の事務所を訪れた。
しかし臨也は居らず、彼の部下らしい女の姿があるだけ。
彼女なら何か知っているかもしれないと臨也の所在を問い掛けた。
…そして今、耳を塞ぎたくなるような事実を聞かされている。
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