15万打リクエスト

□色欲スイマー
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夏だけの特別。
嫌いな奴はとことん嫌うが、好きな奴は楽しみでたまらないその時間。
臨也は、どちらかと言えば前者だ。

「本当に、臨也って肌白いし痩せてるよね」

「新羅に言われたくないかな」

プール。夏場の授業の定番。

塩素で限りなく消毒された冷たい水に足をつけ、ゆっくりと入った。

臨也はプールが好きじゃない。
だからと言って、別に泳げないわけではない。並以上の泳ぎは出来る。
でも去年はその殆どを、仮病なり授業をサボるなりで休んだ。
元から肌を晒すのが好きでは無かったし、肌を出すと毎回白いとか細いとか色々言われる。
別に健康には気を遣っているから痩せすぎているわけではないし日光にも当たっているはずだけれど。
筋肉があるわけでもなく肋骨がくっきりしているせいだろう。
でも、だからと言って太るつもりも無ければ、焼けるつもりも無い。
だから、プールには入りたくない。

…のだけれど。

「手前、他の奴と比べると本当に細いよな」

「…煩いな」

シズちゃんに、泳げねぇのか、と馬鹿にされたから。
泳げる、と断言しても、勿論それだけでは静雄は信じない。
静雄は泳げる上に、プールも好きらしい。
それに、強度に長けた静雄の筋肉は量としては適度なもので、晒すのに落ち度などまるで無い身体だ。
それが憎くもあり、羨ましくもあり――同時に目のやり場に困る。

「新羅も充分細いし白いよ?」

「いやいや、臨也はその眉目秀麗な顔で痩身に白亜の肌だから良いんだろ?」

「…新羅きもちわるい」

あからさまに嫌悪を滲ませた臨也を気にすることもなく、新羅は水に慣れたのか、一人で泳いで行った。
折角入ったけれど、泳ぎたくない。そう思ってプールサイドに上がろうとするが、静雄の視線が刺さる。

恋人をそこまで疑うのか。そう怒ってやりたくなった。

付き合っている。勿論、臨也と静雄が、だ。
二人きりになればもう少しちがうのだけれど、普段がこれでは、付き合っているなどと誰も思わない。
事実、二人に近い門田や新羅も気づいていないほどだ。

渋々、臨也は泳ぎだした。
身体をひんやりとした温度が包み込み、髪をすり抜けた水が頭皮をゆっくりと濡らしていく。
プールなんて入ったのは、いつぶりだろうか。

だるいな、と眉をしかめながら泳いでいると。
後ろから、ばしゃばしゃと聞こえてくるのに気がついた。
と思えば、直ぐ隣に静雄が現れ、一瞬此方を向く。その顔は、嫌なくらい挑戦的で、苛立つこと他ならない。
追い抜かそうとした静雄を抜き返し、50メートルプールで白熱のバトルを繰り広げた。
勿論そのプールで泳ごうと勇往する生徒は居らず、先生が止めに入るまで二人はプールを占拠していた。



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