15万打リクエスト

□嘘つきセンチメンタル
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「いぃざぁやあぁぁ!!」

池袋には、まるで獣の咆哮のような声が谺する。
地獄の扉が開いたのを連想させるその声から逃れるのは、
その声の主、平和島静雄と対等な喧嘩をする数少ない人間の一人、折原臨也だ。
ひたすらに、この人通りの多い街を、正に鬼ごっこな抗争をしながら、般若のように眉根に皺を寄せている静雄へ嘲笑を向ける。

「直ぐにキレちゃって、本当に子供だね、静雄くん」

ふざけた物言いに、静雄の眉間にまた一本皺が刻まれる。
不快感なんていうレベルではないその形相にクツクツと笑って見せながら、臨也は更に逃げる速度を上げた。


100人に「平和島と折原は仲がいいか」と尋ねたら、間違いなく99人は「悪い」と答える。そしてそのうちの少なくとも半分は、完全否定するはずだ。
と、臨也は思う。
勿論それは事実だから、否定のしようがない。

けれど。

「言えるはずが無い、よね」

静雄を撒いた臨也は、そう呟きながら改札をくぐった。その声は誰に耳を傾けられることもなく、雑踏に消える。
勿論、誰に聞いてもらいたかったわけでもないけれど。

俺が奴を、好き、なんて。

仲が悪い。だから、告白なんてできない。
もし、今の仲を顧みずに告白なんてしたら、それはきっと喧嘩という友人とも言えない関係すら解消することになる。
そんなことは、したくなくて。
きっと、ずっとこんな想いを抱き続けるのだろう。




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