15万打リクエスト

□そんな君が好き。
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「何もないよ」

臨也は、もう3度目になるその言葉を紡いだ。
目を赤くさせてそう言う姿は、やはり何もないようには見えず、門田は心配そうな顔をしながらも、そうか、と呟き返す。
こんなとき、詮索されないのは有難い。シズちゃんなら、絶対にそっとしておいてはくれないだろう。

…確かに、シズちゃんだって女に興味がないわけではないだろう。
男と付き合うよりも女と付き合う方が普通だし、本能として女に性欲を感じてもおかしくない。

だから、不安で不安で、仕方がなかった。


「ドタチン、これから暇?」

「別に特に用事は無いけど」

どうしたんだ、と尋ねてきた門田にニコリと笑いかけると、門田の腕に自らの腕を絡ませた。
驚く門田をそのままに、ぐいぐいと引っ張り歩き出し、頭に疑問符を浮かべながら付いてきた門田を見上げてにこりと笑った。

「ドタチン、デートしよう」

「え?でも静雄が…」

「シズちゃんなんかどうでもいいの!」

どうでもいいんだ。あんな奴なんか。

臨也はひたすら笑顔を繕うと、傷を隠すために門田と歩き出した。




「次で最後だな」

上司のトムの言葉に、静雄は頷いた。
その隣には、初めて一緒に仕事をする女の姿がある。
ヴァローナ。それが、今日から仕事仲間になった彼女の名だ。
先刻トムが飲み物を買いに行き二人きりになったときに甘いものの話になり、彼女の堅苦しい口調にまだ慣れないながらも盛り上がった。
何れまた甘味について話したい、なんて思いながら歩いていた時。

静雄は目を見張った。
視線を向けた先には、臨也と門田の姿があった。
それだけなら何も言わないのだけれど。
にこりと笑う臨也の腕は、門田の腕にしっかりと絡められていた。

静雄はまだ仕事中にも関わらず、上司と後輩の元を離れて、
まるで恋人同士なような二人の元に歩み寄って行った。

先に、門田と目が合う。
驚いた顔が臨也へ向き、すぐに顔を上げた臨也が静雄を探し出す。
その表情は、どこか曇っているようにすら見えた。

「おい、臨也」

歩み寄って呼んだ途端、臨也の顔が強張り、門田に絡めた腕に力が入る。
それが気に入らなくて臨也の腕を引けば、威嚇でもするかのような目が静雄を睨み見た。

「今更、なに」

語調の強い、でも何処か切なげな声。
でもやっぱり、その意味が分からないままでは掴んだ腕を離すことも出来なくて、
静雄は無理矢理に臨也を門田から引き剥がすと、そのまま連れ去った。



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