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□そんな君が好き。
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臨也は唖然とした。
それも当然。大好きな大好きな静雄の隣に、臨也と見ず知らずの女が居たのだから。
金髪の、スタイルの良い外人の女。

臨也は思わず走り去った。


というのも、臨也はいつものように池袋に来ていた。
仕事関係ではなく――静雄の恋人として。
そして、趣味の人間観察を兼ねて、仕事中の彼を探している最中――臨也は、その光景に遭遇してしまった。


シズちゃんが、浮気した。
ただ、頭でぐるぐると回るのはそんな言葉。
確定したわけでは無いけれど、ならシズちゃんが普通に女と話せるのだろうか。

やだ。
やだやだやだやだ。
シズちゃんが俺以外の誰かと二人きりなんて、やだ。
本当は、あの田中トムとかいう奴だって、シズちゃんと二人きりになるから嫌だった。
でもそんなのわがままだから言えなくて。
だからといって、代わりに出てくる言葉は、馬鹿だの単細胞だの貶す言葉ばかり。
可愛いことのひとつやふたつ言えたら良かったのに、自分のプライドが邪魔をするから。


ぼすん。
突然視界が真っ暗になって、何かにぶつかった。
何かと見上げれば。

「どうしたんだ、その情けない顔は」

「ドタチン…」

よく見知った門田だった。
情けない顔、なんて、自分は相当酷い顔をしていたのかもしれない。
普段通りを取り繕って、臨也は笑みを浮かべて見せた。

「情けない顔なんて、ドタチン失礼なんだ、から…」

「…臨也?」

なのに、強がった笑みは、涙が溢れて直ぐに剥がされた。

どうして気づいちゃうの。
シズちゃんは見つけてすらくれなかったのに。

門田の手が、涙を堪えようとする臨也の頭を優しく叩いた。

「何があったか知らないけど、話なら聞くぞ」

「…ド、タチ、ン…っく…」

ドタチンは、いつでも優しい。シズちゃんと違って、いつも、いつも。

「う、ふぅ…う゛ーっ」

「…おいおい、顔崩れてるぞ」

門田はそう苦笑しながら、被っていた帽子を臨也に渡した。
鼻を啜りながら首を傾げる臨也を再び撫でて、言う。

「それで隠せよ。泣いてる顔見られても嬉しくないだろ」

「…っ、うん……
ふ、っく、うぅ…ひっく…」

静雄のあんな場面を見た後だからだろうか、その優しさは涙腺を容赦なく擽る。
臨也は帽子を強く握り締めながら、門田の隣で泣いた。



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